忍者ブログ
喜多村英梨は覇者の系譜を引き継げるのか
 キタエリこと喜多村英梨さんが、スターチャイルドレーベルからアーティストデビューするという話は、結構聞き及んでいる人が多いんじゃないかと思います。実はこの話を聞いて、個人的にかなりテンションが上がりました。

 ラジオ等で予告されていた“重大発表”がスタチャからのデビューだった事について、受け止め方は様々だと思います。キタエリ自体がすでにアニメ界ではよく知られた人気声優ですし、それが出演作品の主題歌を歌うのは、ありふれた話と言ってしまえばそれまでです。それが何故こんなに僕のテンションを上げるのか、口はばったい言い方をすればアンテナにかかるのかと言えば、それは“キタエリ”と“スターチャイルド”という組み合わせだからに他なりません。

●喜多村英梨は過小評価されている

 喜多村英梨さんと聞いてどういうイメージを持ちますか? 僕の中では(本当に)なんでもこなす器用なバイプレイヤー、というのが率直なイメージでした。どんな役柄でもピタっとこなして、必要以上にはキャラの前には出ない。ラジオも、イベントトークも、歌も、演技も、何もかも水準以上にこなす。絵がうますぎる。ちょっとヨゴレキャラで笑いも取れる。2時間枠を投げたら生放送を2時間完璧にこなす。とにかく何でもキタエリに任せておけば間違いない。付け加えるなら、子役出身で若くてかわいい。子役出身と言っても、アニメと声優への思い入れが本当に強くて、子役上がりとは言われたくない意地がある…そのあたりが僕の中のキタエリ像です。

 一度ある取材で自分が「では若い衆に一言キタエリ姉さんから葉っぱをかけてください」的なことを言ったら「私この中で一番年下なんすけど」と返されて超謝った記憶があります。なんでそんなポカを自分がやらかしたのかと考えると、要は彼女のスキルやキャリアが実年齢から考えると飛び抜けていて、名前を知るようになってからは「これだけ人気で、できる人なんだからある程度のキャリアはあるだろう」という思い込みがあったんだと思います。

 先ほど、過小評価と書きました。世の中の多くのアニメファンは、ぼんやりと「キタエリはラジオのおしゃべりも、アニメの演技も、キャラソンも、うまいよね」というイメージを持ってるのではないか、と思います。ただ、どれぐらい演技がうまいのか? トークのアドリブがどれぐらい効くのか? といった要素、声優としてどれぐらい人気なのか…といった要素には、明確なモノサシが存在しないんです。活きのいいジュニア声優で深夜アニメのあちこちで見ます! という人と、ゴールデンタイムの子供向けアニメで長年レギュラーを取っている人のどちらが人気か? それを図る明確な尺度を、我々は持ち合わせていません。

●今の声優業界は、声優の人気を「歌手」としてしか測れない

 ではどこになら物差しがあるのか。もちろん業界内には、データとしてのしっかりした数字があるでしょう。よく言われるのは、ドラマCDによく起用される声優=固定ファンの数字を持っている声優は人気といったものです。ですがそうした数字は、もちろん外側からは見えません。では今、一番明確なモノサシは何か?

 それは、「オリコン」です。自分を含む多くの声優ファンは「田村ゆかり、水樹奈々、堀江由衣」を三大人気声優として認識してると思います。ですがその尺度を支えてるのって、CDの売上枚数であり、武道館や西武ドームといったコンサートのハコなんですね。これは話を『けいおん!』か何かに置き換えても構いません。「CDがこれだけ売れるんだから、かなり人気に違いない」という推定が、大きな尺度になってるんですね。逆に言えば、個人名義CDを出さない声優の人気は、かなりあやふやであいまいとも言えます。

 で。そういう「レコードの数字が人気の尺度」という流れを遡っていくと、必ず行き着くのが声優界の伝説・林原めぐみさんなんです。90年代の林原めぐみの「毎日アニメに主演していてラジオトークも巧みなナンバーワン人気声優」が、CDを出したらオリコン1桁に当たり前のように食い込んでしまう。この、声優としても歌手としてもラジオパーソナリティとしても人気、という林原さんの超人ぶりが、女性声優の人気査定のひとつの原器になっている、というのが僕の考えです。

 そうした、アフター林原の“声優アーティスト”世界の、いわば保守本流ど真ん中……それが、スターチャイルドレーベルなのです。

●実績やイメージの地道な積み上げ

 “今一番人気の声優は?”という問いに、一番多くの人が名前を挙げるのは水樹奈々さんでしょう。紅白歌合戦に出演し、西武ドームを始めとした数多くのビッグライブを成功させ、役者としてもプリキュアやなのはなど実績は十分。AKB48の中にもファンがいて…
…と、積み上げたもろもろの高さが違うんですね。

 そして“大人気声優”という実績の積み上げ、アリバイ作りにおいて、少なくともひとつ前の世代では確実に機能していたのがスターチャイルド、キングレコードという枠組みであり、肩書きです。林原めぐみさんに端を発し、現在は堀江由衣さんが所属するスターチャイルドレーベル、そして水樹奈々さん、田村ゆかりさんを担当するMM制作部は、共にキングレコードに属しています。

 たとえばフライングドッグなら坂本真綾さん、GloryHeavenだったらスフィアや茅原実里さんなど、母集団によっては比肩するであろう人気声優アーティストはたくさんいます。しかし「人気女性声優アーティスト・アイドル声優を3人挙げろ」と言われると、今でもやっぱりキング組が頭にのぼるのです。それは何故かと考えたときに、実は意外に保守的な声優ファン・オタク業界において、スタチャ・キングというトップブランドが持つイメージ効果は意外と大きいんじゃないか、と思うのです。堀江さん・田村さんの2人がやまとなでしこというルーツと歴史を共有し、水樹さんと田村さんは『リリカルなのは』やラジオ番組的なつながりを持つことが“先頭集団”のイメージを形成しやすいこともプラスに働いているかもしれません。横のつながりが、相対的な位置をつかみやすくしてるんですね。

 これはふわっとした、潜在意識も含めたちょっとした「イメージ」の話です。ですから、スタチャから声優アーティストを出せば売れるのかといえば、そんな簡単な話ではありません。今の時代のこの世界、お客さんはシビアですから。ですが話は戻って、キタエリというアーティストは、声優としての実績・知名度・実力と、ボーカリストとしてのスペックを現時点で備えてるんですね。そこにスタチャというブランド、キングレコードというスターを作り上げてきた集団のサポートが加わることで、ひょっとしたら突き抜けた化学反応がこの夏起こるのでは? というのが、今僕の中にあるわくわくの正体なのだと思います。

 まずその最初の試験紙として、「デビューシングルの売上」は非常に大きいでしょう。最近の流れとして、「あ、これは売れるもの(人・コンテンツ)なんだ」とファン、そして流通に認識してもらえるかが、その後に大きく影響する傾向があります。「ジワ売れ」を許容する余裕が業界にないとも言えるかもしれません。

 その初動に大きく影響するであろう、キタエリのテビュー曲「Be Starters!」の出来は、現時点ではまだわかりません。ですが、タイトルやスタッフからある程度類推することはできます。このタイトルのオープニング曲で、電波曲や変化球はたぶん、ありませんよね。作曲の山口朗彦さんは、アニメ主題歌では『インフィニット・ストラトス』のED「SUPER∞STREAM」や、『探偵オペラ ミルキィホームズ』のOP「正解はひとつ!じゃない!!」を手がけています。作詞の大森祥子さんは、『けいおん!』シリーズの数々の楽曲…「Cagayake!GIRLS」や 「Don't say "lazy"」、「GO!GO!MANIAC」他多数を手がけている人です。人選から見ても、あ、結構本気で売りにきてるんじゃないかな? という予感がするのです。

 もちろん、人気は水物。どれぐらい売れるかはフタを開けてみないとわかりません。ですが、若く実力あるアーティストが、老舗のサポートを得て新たな舞台で羽ばたこうとしている。ラジオなどを聞く限り、本人のモチベーションは非常に高い。もしかしたら、5年後には声優界のひとつの分岐として語られるかもしれないこの夏。“キタエリ”の新しい一歩に、ちょっと期待してみてもいいんじゃないでしょうか? 来週の『SAY! YOU! SAY! ME!』はキタエリ密着、らしいですよ。個人的にはキタエリのおもろい部分より、意外と真面目で真摯な一面にスポットが当たると面白いと思うのですが、どうなるでしょうか。
PR

2011/05/30 00:35 | Comments(0) | TrackBack(0) | 雑記(アニメ系)
高橋名人と、ぼく。
 ハドソンの広報担当として26年間名人の名を担ってきた高橋名人が、ハドソンを退社するという一報が入ってきました。高橋名人を見て育った名人ジェネレーションとして、ごく一時期ですが名人番として何度かインタビューなどをさせて頂いた人間としての雑文を書きたいと思います(当然、名人ともハドソンとも関わりのない僕のフィルターを通した話です。)。

 高橋名人とは何か。それを考えるには26年時計の針を戻さないといけません。今はPS3、Xbox360、DSといったハードが全盛ですが、当時はまだ、ファミリーコンピューターが世に出回ったばかりでした。「あいつんちにはファミコンがある」で子供たちが集まる感じです。そんな時期コロコロコミックを中心とした子供向け雑誌媒体に彗星のように現れたスターが「高橋名人」なのです。今のコロコロのヒーローって、ポケモンですか? 当時の子供雑誌ではポケモンのかわりに、ハドソンの広報社員・高橋利幸氏や、長州力、西武の清原などをスターにしようとしていました。ライバルのボンボンはハルク・ホーガンを漫画にしてましたから、昭和という時代が伺えますね。

 当時の高橋名人は、伝説のヒーローでした。曰く、1秒間に16連打ができるらしい。いや17だ。連打のインチキがばれて警察に捕まったらしい。いや表彰されたらしい。汚物で蝉を捕る札幌穫りを考案したらしい。車を素手で持ち上げたらしい。スイカを連打で割ったらしい。それらは、当時のキッズには真実でした。高橋名人はヒーローであり、イコンであり、名人ならなんでもありだったのです。名人が「目隠ししてスターソルジャーをプレイする」と言えば、僕も一面の敵登場位置を全て暗記してまねをしました。全国のバカな子供が似たようなことをして、連打中に指の皮を痛めました。それが1985年からの数年間、ファミコン少年たちの黄金の時代です。

 そんな生ける伝説・高橋名人も、一時期露出を控えて、主にモバイル方面の仕事などをなさっていた時期もあるようです。名人チルドレンである僕が高橋名人にお会いできたのは、高橋「名人」が生まれて20年ほどたった、2005年前後の一時期でした。

 当時お会いした名人は頭をつるりとそりあげ、スマートになってまるで若返ったようでした。スープカレー店・マジックスパイスの最強クラスの辛さ「アクエリアス」を涼しい顔でたいらげる名人。野菜の甘みを逆に感じるそうです。当日の朝、唇の下を剃刀で切っていた僕は、名人と会って頭に血がのぼったのか、あろうことかインタビュー中に出血しました。すると名人は「いいものをあげよう」といって水絆創膏をくれました。高橋名人の回復アイテムで血はぴたりと止まりました。にこやかに楽しいお話を終えた高橋名人は、でっかいバイクにまたがって颯爽と帰っていきました。その姿があんまりかっこよかったので、僕は「高橋名人20周年インタビュー」の請求書を出し忘れ、気がついたら発売元はなくなってました。ただ働きですが悔いはありません。

 その後、ハドソンがコナミの小会社となり、東銀座のちょっと古びた居心地のいいビルで僕らを出迎えてくれていた高橋名人は、ヒルズの住人になりました。この頃見かけた高橋名人は、かわいい女の子がたくさん出てくるゲームの紹介ステージを、一日何回転もしてこなしていた気がします。僕は、「高橋名人は子供たちのものじゃないかな」と思いながらそれを眺めていました。その頃も高橋名人は、「コスプレ特集に名人の写真使わせて」とお願いしたら快くOKしてくれました。そんなのが通るのは高橋名人とジョイまっくすだけです。

 おそらく僕が行った最後の高橋名人インタビューで、少しいじわるな質問をしました。「名人、今でもゲームは1日1時間だと思っていますか?」と。ゲーム業界が変化し、オンラインプレイが当たり前になった今、これは形骸化した標語です。名人はにこっと笑って、「高校生より上は、好きにやればいいんだよ。でも、やっぱり子供はゲームは1時間!」と言いました。また、「引っ越していった友達とオンラインで遊べることもあるかもしれない」とも。人間としての高橋氏は、「子供は外で遊ぼうよ!」と言いたかったんじゃないかと思います。その間を取った繊細な回答を探していたのが、企業人・高橋名人のバランス感覚だったのではないかと思うのです。

 80年代という時代、各メーカーには1人の名人がいました。広報社員が、キャラを立てて夕方のテレビ番組に出るのが当たり前の時代だったのです。ある名人はファミ通に行き、ある名人はスクエニに行き。それぞれが日常に帰る中、高橋名人は名人として今日までありつづけました。そこには、高橋名人にしかわからない葛藤や、立場や、悩みがあったと思います。それはご本人にしかわかりません。

 であるならば僕らは、「名人おつかれさま! これからまた楽しいゲームの話をしましょう!」と、氏の新しい道を祝福したいと思います。願わくば高橋名人が、新天地でも子供たちと、かつて子供だった者たちを笑顔にしてくれることを祈ります。

(追記:現在ライター中里は、twitterアカウントkiri_nakazatoで活発に活動しています。ブログや公開メールでは迅速にレスポンスできない可能性が高いです。)

2011/05/23 18:07 | Comments(0) | TrackBack(0) | 雑記(ゲーム系)

| HOME |
ブログ [PR]外為 アルバイト