物語の継承は関係性から生まれる。@美希移籍
 パシフィコ横浜に馳せ参じたプロデューサーの皆様、おつかれさまでした。僕も一へっぽこ記者として参戦しましたが、素晴らしいライブでした。その半分は声優さんたちとスタッフの努力ですが、もう半分は客席が作ったものだと思います。自分が大好きな作品のファンがマナーが良くて空気が読めてあったかいというのは、とても誇らしい気持ちになりますね。

 ライブ最大のサプライズといえば、串田さん登場……は本気で嬉しかったんですがここでは置いておいて、美希の961プロ移籍とたかね・ひびきの復活登場でしょう。昨日の僕はお仕事モードたったんですが、串田さんの登場と961プロ登場のときだけは素で「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」と唸ってしまいました。あと「My Best Friend」の釘宮さんの「きゅん、きゅきゅんへい♪」の時は「くぎゅぅぅぅぅ…」のようなよくわからない呟きをもらしてしまいました。気持ち悪くてすいません。

 この「美希移籍」の仕掛けを見て、僕個人は「2008年8月になって、アイマスにこんなにワクワクできるなんて!」と感動してしまいました。そして巧いなぁ、ゴッドアングルだ、と唸らされたのですが、実はネットでは意外と賛否両論のようです。印象ですが、ライブ参加組には肯定的な人が多く、不参加組には否定的な意見が比較的多いように思います。

 これは、ライブに参加した人は、ムービー上映の最後の未知のシルエット、そして美希のマイクパフォーマンス、黒井社長の登場、高音・響の紹介から新曲「オーバーマスター」へ……という一連の流れから、“今この場で、新しい何かが始まる予感”を感じ取った熱があるからだと思います。二次情報からこの話を聞いた人には「美希の移籍・喪失」といったネガティブな要素が最初に来るから、否定的に感じるのではないでしょうか。プロレスファン的な発想だとは思いますが、ライバル事務所の立ち上げのタイミング・人選的に完璧に近いアングルだったんじゃないかと思っています。

●思い入れは、関係性から育まれる
 否定的な意見の中には、「UMDの容量の関係で3人しか入らないから、美希移籍、2人追加で数合わせ」的なものも見かけます。PS2互換のアーケード基盤を移植にするから、という意見も含め、まったくの的外れという訳ではありません。しかし、それだけでは絶対にないはずです。ここで落ち着いて考えてほしいんです。僕たちは、高音と響の加入と、ライブへの登場を、さほどの違和感・拒絶反応なしに受け入れています。これはアイマスのようにコンテンツとしての成熟度と歴史の深い作品では、実はそれなりに特異なことなはず。それには、何か理由があるはずです。

 こうした、アイドルチームへの新世代の加入という意味で、格好のお手本となる存在が現実に存在しています。ポジティブ作詞の小野田Dも大好き、モーニング娘。です。「娘。」はオリジナルメンバーに、2期メンバー保田・矢口・市井、3期後藤、4期石川・吉澤・辻・加護、5期高橋・紺野・小川・新垣とメンバーを増やしていきました(成功例としてサンプルにできるのは5期までだと思います)。こうした新規メンバーは、最初は現メンバーとのスキルや華の差で、常に最初は叩かれます。しかし、じきに彼女たちも大切な仲間へと変わっていきます。それは、“現メンバーへの思い入れ”が、関係性を通じてほかメンバーにも対象を広げ、伝播していくからです。自分の大好きなメンバーたちと一緒にライブを戦い抜き、先輩たちに叱られ、悩んでいる新人の姿が、やがて現メンバーと同じように愛しく感じられるように変わっていったのです。「中澤姐さんの意志を受け継いだ新メンバーたち」「なっちに憧れたガキさんが、ライブでなっちと一緒にライブで歌う姿に震える」といった、現メンバーと新メンバーの関係性が、新しいメンバーへの思い入れを育てていくんですね。

 現在のモーニング娘。が没落しているのは、新陳代謝を重ねすぎて「オリジナルの想い・ファンの思い入れ」が既に希薄になってしまっていること、機械的・定例イベント的な卒業の繰り返しに、不祥事による脱退がトドメをさしたから、だと思います。「卒業」には後輩への継承がありますが、「脱退」にあるのは断絶だけですからね。

 仮に、昨日のライブに響と高音の2人だけが出てきて歌い踊った場合、観客に届くのは戸惑いだけだったのではないかと思います。真ん中にアッキーが立って歌っているからこそ、これはアイマスなんだ、と僕らは疑いなく受け入れることができたんです。その後、「THE IDOLM@STER」を一緒に歌ったことも含めて、彼女たちがアイマスガールズに迎え入れられる儀式は無事済んだのだと思います。

 美希が961プロにいることで、僕たちは美希というフィルターを通じて961プロと、その中の人たちを見ることができます。単なるライバルではなく、仲間に対して見せる顔を美希の視点から感じることができるんですね。未知なものや新しいものに対する違和感・抵抗ってのは意外と大きいですが、僕らは美希のことをよく知っていますから。ラジオ番組にゲストとして登場するときも、全くの新人さんが2人来るのと、「オニギリちょっと紹介しちゃってよ」と間にアッキーが入ることができるのとでは全く違います。

 美希初登場のゲームショーで、僕らは今井さん・中村さんの2人を通じて長谷川さんの登場を違和感なく受け入れることができました。そして下田さんとのラブラブぶりを通して、今ではすっかりアイマスガールズの一員です。今度は、美希と長谷川さんがそのバトンを新しい2人に渡す番なのだと、僕は思ってます。

 あと2人が拒否反応なく受け入れられたのは、やはり「たかね」と「ひびき」が誰もが知ってる、でも誰もが知らないキャラだったのが大きいと思います。いつかはこの2人が来るんじゃないか、という心の準備を、僕らはエイプリルフールのたびに繰り返してきたんですから。

 そんなわけで、狐汁的には961プロ、大肯定です。移籍や新事務所の立ち上げは冒険です。しかし、居心地のいい停滞は、やがて澱んでいくものです。関係がぬるくなってくっていうか。そしてどこかで冒険をして新しい風を入れないといけないとするなら、昨日のライブのタイミング・やり方は、計算尽くされた最善の一手だったんじゃないかと思います。

おまけ 特に戦略がなかったら、ファミ通独占で出しちゃったんじゃないかな? 本当に秘匿したサプライズで発表して、ライブに集まった5000人の多くを味方に変えてしまった、作戦勝ちなんじゃないかと思います。あのライブを体験して、ネガティブな感想を持って帰るのはなかなか大変です。
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2008/07/28 21:19 | Comments(106) | TrackBack(2) | アイドルマスター

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