スレイヤーズという時代
 7月から『スレイヤーズREVOLUTION』が始まります。現在30前後の世代にとっては、これはなかなかのビッグニュースです。しかし若い世代からすると、90年代に人気だったライトノベル発のアニメ…と認識はしていても、時代を共有していない世代の人にはなかなかピンと来ないかもしれません。同じ林原めぐみさんがヒロインを務める作品でも、エヴァと比べると認知度はかなり落ちるでしょう。内容も、それほどとんがった作品ではありません。では何が特別だったかといえば、今では“当たり前”になっている扉を幾つも開いた作品だったんです。

 スレイヤーズは、1989年に創設された「ファンタジア長編小説大賞」の第1回準入選作品です(第1回は大賞は出ていません)。ライトノベル界の御三家といっていい「角川スニーカー」「電撃」「富士見ファンタジア」ですが、その中でも最古の小説賞の最初の受賞作品なわけです。その最初のアニメ化は、1995年のことでした。黎明期のライトノベルアニメ化に関しては、角川スニーカー文庫が一歩先んじており、1990年~1991年のOVA『ロードス島戦記』、1993年のOVA『フォーチュンクエスト』、1991年~1995年に劇場版・OVAで展開された『アルスラーン戦記』などの例があります。これらスニーカー文庫3作に、1992年に劇場映画化された富士見ファンタジア文庫の『風の大陸』を加えた4作品を、90年代前半の角川は(ラノベの中では)強く推していた気がします。

 この頃の従来のラノベは、今よりもずっと固く、いい言い方ではないかもしれませんが、“本格的な”小説でした(『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』のような大問題作もありましたが)。そして見れば分かる通り、90年代前半のラノベのアニメ化は、OVAや劇場版ばかりです。『機動警察パトレイバー』などで確立された、「コンテンツの映像そのものをビデオパッケージにし、マニア層に販売する」というフォーマット上でのビジネスです。ラノベ発の作品は、あくまでもマニア向けのニッチな作品でした。

 そうした環境を激変させたのが、『スレイヤーズ』だったのです。“ラノベらしい正統派ラノベ作品。主人公は美少女だが、女子も楽しめる明るく楽しい作風”という、それまでにありそうでなかった作品性が大受け。弱小のテレビ東京が、金曜の18時30分からの時間帯で視聴率10%近くをコンスタントに叩き出すのは、まさに脅威でした。このヒットを受け、前述のOVA・劇場版化されていた作品が、97年~98年頃に、次々とTVアニメにリメイクされ、スマッシュヒットを続けました。『スレイヤーズ』の最大の功績…それは、「ラノベのアニメ化作品は、地上波でもビジネスになる」ことを広く知らしめたことなのです。当時、人気アニメの企画が小説に落とし込まれることはあっても、ヒットしたラノベがアニメに…なんてルートはありませんでした。今ではギャルゲ、エロゲにいたるまでが供給源になっていますが、ラノベにTVアニメ化の道を開いたのは、『スレイヤーズ』といっても過言ではありません。あのヒットが無ければ、ハルヒもわっちもふもっふもかのこんもバッカーノも図書館戦争もなーんにもなかったかもしれない…そう思うと、ちょっと特別な作品に思えてきます。もちろん、道を開くだけでなく、『スレイヤーズ』は快進撃を続けます。

スレイヤーズ(1995年4月~9月・TVアニメ)
劇場版スレイヤーズ(1995年夏・劇場版)
スレイヤーズEX.(1995年10月~4月・ラジオドラマ)
スレイヤーズNEXT(1996年4月~9月・TVアニメ)
スレイヤーズRETURN(1996年夏・劇場版)
スレイヤーズN・EX.(1996年10月~4月・ラジオドラマ
スレイヤーズすぺしゃる(1996年7月~1997年5月・OVA)
スレイヤーズTRY(1997年4月~9月・TVアニメ)
スレイヤーズぐれえと(1997年夏・劇場版)
スレイヤーズごぅじゃす(1998年夏・劇場版)
スレイヤーズえくせれんと(1998年10月~1999年3月・OVA)
スレイヤーズぷれみあむ(2001年冬・劇場版)

これだけ制作されたんですから、笑いが止まらないぐらい儲かったのは間違いないでしょう。また、最近のファンの人には林原さんといえば、「綾波の人でしょ」ですんでしまうと思うのですが、当時の林原人気は異常でした。アニメージュのアニメグランプリで声優部門を1989年から2001年まで連覇、アルバム「iravati」売り上げが27万枚とされてますが、最終的には40万枚を超えた、なんて話もあります。上記のスレイヤーズ系の作品でもほとんどで主題歌を担当し、これまた売れまくってるわけです。そうした時代を担った声優にとってのあの頃の「代表作」は何かと考えると、僕はエヴァよりもスレイヤーズなんじゃないかな、と思います。

そういう作品が、10年ぶりに帰ってくるのです。
懐かしさ半分、今の自分の目にどう映るかの興味半分だとは思いますが。
おっさんたちのテンションが上がりがちな理由、おわかり頂けたでしょうか。

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あ、そうそう。
今月のアニメージュのネットにまつわるコラムコーナーで、「銀河の歌姫が現実になった日。」というテキストを書きました。機会があれば、ぜひ。
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2008/06/11 05:53 | Comments(30) | TrackBack(1) | 雑記(アニメ系)

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