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2026/01/18 12:48 |
Wiiにやられたんならしょうがない?
ゲーセンに逆風 大手、店舗閉鎖相次ぐ

 セガ、ナムコなど大手が相次いでアミューズメント施設の大量閉鎖を始めています。
SNKのネオジオの登場により、家庭でもゲームセンターと同等のクオリティが体験できるようになったためで、アミューズメント業界は“100メガショック”にさらされている形です。……と書いても、悪い冗談にしかならないのが、「wiiが出たから」と言われると、なんだか納得しそうになってしまうのがおそろしいところです。

 これに対する反応として、「ファミコンやスーパーファミコンはもっと普及していたよ」というものをよく見ます。この言説は普及台数をベースにした数字としてはもっともなのですが、メーカーの人たちとしては「体を動かす体感ゲームが家庭でもできるようになったから、客はゲームセンターに来ないんだ」という主張ですから、Wiiと対比に使うべきなのは「ファミリートレーナー」とかだと思います(笑)。もっとも、「ユーザーの余暇の時間の奪い合い」という意味では、当然Wii(というよりDS)の登場も影響があると思います。「ニコニコ動画の登場で…」とか、「萌えパチの登場で…」とかと、互換可能な意味で、ではありますが。そんなわけで理由の一因だとは思いますが、「原油高でロードサイドの店舗が打撃を受けたから」の方が、まだ説得力があるレベルの話だとは思います。

 さて、ではなぜゲームセンター系の大型アミューズメント施設は打撃を受けているのでしょうか。僕は、「大型アミューズメント施設という業態自体にかなり無理がある」と考えています。僕らは繁華街のゲームセンターに行けばプライズ機やプリクラがあって……というのを当たり前に捉えていますが、それらの嚆矢となったのは1992年の六本木「GIGO」やニコタマ「ナムコワンダーエッグ」のオープンです。当時のGIGOのパンフレットの内容を引用してみましょう。「新しい遊びはいつもギーゴから生まれる。ギーゴを知らず六本木を語るなかれ」「1F<異次元世界への門>」「2F<閉ざされた無限の空間・宇宙>」「3F<古代世界と未知なるもの>」「4F<貴族社会と現代社会>」……内装にはモアイやシュールな太陽が並び、トータルコンセプトは「シュールレアリスム」です。このセンスを見ればわかる通り、大型アミューズメント施設型ゲームセンターそのものが、“ジュリアナ東京”と同じ時代の、頭蓋骨の中にバブルをパンパンに詰め込んだ施設だったわけです。80年代後半の薄暗い不良の溜まり場であったゲームセンターに比べれば、そのイメージは格段によくなりました。その反面、都心の一等地に広大な敷地を複階層で確保し、最新のアミューズメント機器を詰め込む大型ゲームセンターの経営規模は、町のゲームセンターとは桁が違うコストを要するようになったのです。それでもモデルとして成り立ってるのは、アミューズメント施設の経営母体が中身のゲーム筐体を手がけるメーカーでもあることのシナジーの大きさかなと。

 セガやバンダイナムコが企業である以上、常に利益の増大を使命としています。そして、各店舗の客数が常に右肩上がり…という状況がなかなかありえない以上、新規出店によって売上高を伸ばそうとすることになります。しかし、人口密集地である都会は限られている上、地価も非常に高く、なかなか収支的に厳しい。そこで大型店舗は、郊外のロードサイドにあるショッピングセンターなど、「地価はほどほど、車でやってくるファミリー客をターゲットにした総合店舗」に入居することが増えてきます。

 時を同じくして、ゲーム筐体の大型化が進みました。売り上げを上げる施策のひとつとして、「大型で演出・エンターテイメント性の高いメダル筐体」「コアプレイヤーから大量のインカムをむしりとる大型カード筐体」などが主流になっていったのです。この傾向の影にこそあるのが、Wiiに代表される家庭用ゲーム機の革新による、「別にゲームセンターに行かなくても、同クラスのビデオゲームが家庭でできる」という事実だと思います。ゲームセンターでしか体験できないゲーム体験を追及すると、筐体は自然大型化したのです。それは要求する敷地の増大、ゲーム機器の価格の高騰を招き、新規出店のアミューズメントセンターはますます、郊外型が主流になっていったのです。一方、東京・大阪など都心部のローカルなゲームセンターは、敷地面積的にそれらはおけません。しかしビデオゲームに集客力はない……ということで、「通信対戦麻雀、プリクラ、UFOキャッチャー」の、取りはぐれのない3トップに偏るようになりました。

 大型店舗の初期投資が増大することは、当然リスクの増大でもあります。2003年頃までは、景気の良化の影響もあり、なかなか好調だったようです。しかし、それを受けてさらに拡大傾向を続ければどうなるか。アミューズメント施設を利用する人口が有限であり、ここ数年が「既存の大型筐体の新作は出るものの、ゲームジャンルとしては新鮮味はさほどない」という安定期だった以上、いずれパイを食い尽くす事態になります。そこに景気の減速、Wiiの登場、円安、原油高……などの要因が重なれば、店舗数とコストが増大するほど、あっさりと収支状況は悪化します。そのことは運営している側が一番よくわかっているようで、2006年~2007年頃、ゲーム系の編集部にはセガから頻繁に「クラブセガ○○リニューアルのお知らせ」といったFAXが届きました。○○には大抵、「どこだよそれ」という地名が入ります。ナムコからは「飲食に力をいれまっせ」というオーラが漂うFAXが多かった気がします。拡大傾向を続けながらも、“なんとかしなきゃ”という感覚は当然あったはずです。

 そこに来て、2007年1月、親会社スクウェア・エニックスの主導により、タイトーのアミューズメントセンターの整理統合に伴う40数店舗の閉店、不採算店舗撤収後、再び拡大を目指す……という決定がなされました。タイトー(スクエニ)がまず動いたことで、他の大手も「おいおい、こりゃうちも大変だぞ」と改めて認識したはずです。株主は当然、「タイトーはああしたけどどうすんの。なんも対策しねーの」とぷんすかしてくる事が予想されるからです。もちろん、セガやナムコクラスの超巨大企業が、すぐさま追随……というわけにはいかなかったと思います。しかし、2007年6月、『ダービーオーナーズクラブ』の仕掛け人であり、アーケード色の強い小口氏から、当時の会長の里見氏にセガの経営トップがバトンタッチした時点で、セガのアミューズメント施設に大鉈がふるわれるのは規定路線だったでしょう。「店舗大量整理」となれば株価に与える影響は甚大。それなら、セガやタイトーに足並みを合わせて、少しでも悪目立ちしないように……とナムコが考えるのは当然のこと。かくして、大手が一斉に決算前の整理統合に走り、アミューズメントの冬の時期がやってきた……というのが、僕の考えです。

 大真面目に書いてしまいました。一応E3とかも取材行ってるんだよ、ゲーム系の編集部にいたんだよ、萌え声優オタライターなだけじゃないんだよ! ……というわけで、そっちの仕事も誰かください。お願いします。
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2008/03/18 21:09 | Comments(0) | TrackBack() | 雑記(ゲーム系)
ユーザーは画質のためにDVDを購入するのか?
 角川デジックスの福田正社長が、「ハルヒやらき☆すたが売れたのは動画配信サイトに、ユーザーが動画をアップロードしてくれたおかげ」といったニュアンスの発言をし、ユーザーによる動画の無断アップを肯定的に表現したことが話題になっています。これ、原文を見る限りは、海外市場を強く念頭に置いた発言だと思うんですけどね。いずれにしても、この件に関しては賛否両論百花繚乱だと思うんですが、今回はちょっと視点を変えて書いてみたいと思います。

 実は僕が気になったのは、「きれいな映像で見たい人は、ちゃんとDVDを買いますよ」というくだりなんです。ユーザーは、より鮮明な画質を求めてDVDを買うのでしょうか? もちろん、そうした面はあります。僕自身学生時代は、レンタルビデオやダビングテープの画質では満足できずに、『エヴァンゲリオン』のLDを買っていました。さらに以前は、OVAなどは購入するしか視聴手段がなかったわけですが。

 しかし、今『ハルヒ』や『らき☆すた』は、優れた画質を目当てにDVDが購入されているのでしょうか? 『らき☆すた』はゆるーい日常を描いた内容で、作中には止め絵も多く、高い映像クオリティやアクションを売り物にした作品ではありません。ブルーレイなど新たなメディアが登場するたびに、「果たして、この作品を高精細な映像で視聴する意味はあるのか?」と感じるのですが、作品の品質をメディアのクオリティが追い抜いてしまうと、かえって粗が目立ってしまうこともままあるものです。そもそも、アニメーションは地上派での放送を前提に成立してきたものですから、クオリティ的な基準は概ねテレビです。『FREEDOM』や押井守作品、最近なら『空の境界』や『新ヱヴァ』などの作品をブルーレイで、という需要は理解できます。しかし、地上波のサイクルで制作され、カットによっては作画が崩れることも珍しくないアニメのDVDは、本当に映像クオリティを目当てに購入されているのでしょうか?

 DVDやグッズを購入する動機には、「視聴欲求」以外に、「収集欲求」があるのではないかと思うのです。このうち、視聴欲求は、多くの場合、Youtube等での視聴でも十分に満たされるのではないか、と考えています。ストーリーを自然に追える画質で、音声にもさほど劣化はない。Youtubeやニコニコが「耐えられないほどの低画質」だとしたら、携帯等のワンセグ放送があれほど受け入れられるでしょうか。

 オタクには、ムーブメントに参加したい欲求、そして消費したい欲求があります。流行に流される“スイーツ(笑)”層をオタクは嘲笑しがちですが、「みんながいいと思う流行りモノに、自分ものっかりたい」という欲求は、オタクだってしっかり持っているのです。コミケの企業ブースには、ものすごい列ができます。その列に徹夜で並ぶファンたちは、販売されるグッズをひとつひとつ吟味して、ぜひ欲しい! と思ったから並ぶのでしょうか? 京アニやTYPE-MOONの限定商品であれば、商品内容の価格と価値がつりあっている限り、「なんだってほしい」んじゃないでしょうか。全く同じものが、アニメイトで普通に販売していて、果たして同じ値段ですべて購入するでしょうか。「映像がいいからDVDを買うのだ」という考えは、「コミケの限定グッズは品質が素晴らしいから売れるのだ」と同じように聞こえるのです。そこには「祭に参加すること自体が楽しい」という視点が欠けています。

 『ハルヒ』や『らき☆すた』が売れるのは、それが世代を代表する共通体験だからだと思います。その商品を購入し、本棚やラックに作品が「並んでいること」自体が気持ちいいのです。社会人で日常的にアニメのDVDを買う習慣がある人なら、買ったきり、パッケージを開けていない作品がいくつもあるのではないでしょうか。これは、ハードディスクレコーダーも同様です。全話を録画していることに満足を覚えていても、それを2度見返すことがどれだけあるでしょうか?

 世代を代表する作品は、ユーザーにリーチする場面を増やしていけば、より大きなムーブメントを生みます。DVDそのものの売り上げ以上に、関連グッズや音楽CDなどが、核分裂的に売り上げを伸ばしていくのです。ですから、『ハルヒ』や『らき☆すた』、ゲームなら『アイドルマスター』などニコニコ動画と親和性の高いメディアが、コンテンツ削除を行なう必要が低いのは当然です。これは別に、角川やバンナムがユーザーフレンドリーとか、著作権に寛容とか、そんな話ではないのです。

 『バンブーブレード』はニコニコでかなりの再生回数でしたが、DVDの売り上げは堅調です(ある程度は売れてます)。はたして、『バンブーブレード』がつまらない作品で、『らき☆すた』は素晴らしい作品だから、この違いは生まれているのでしょうか。僕はそうは思いません。『バンブー』は(その作品規模・予算規模からすれば賞賛すべきな)良作だったと思います。

 もし、DVDの購入が本当に画質目当てであるのなら、ダウンロード配信が発達し、DVD相当の映像がダウンロード配信できるようになれば、DVDメディアは廃れていくはずです。しかし、僕はそうなるとは思いません。商品を、パッケージという形のある状態で購入し、手元においておきたい……という欲求・需要は変わらず存在するはずだからです。

 わりと話が散ったのでまとめると、

・ユーザーは視聴欲求だけでなく、消費・収集の快楽の為にDVD・グッズを購入する
・こうした傾向は、“みんなが見ている、買っている”作品ほど強くなる
・だから、一部の成功例を全体に適用しちゃうのは怖いよ

 と思うんですが、いかがでしょう。

2008/03/17 20:36 | Comments(9) | TrackBack() | 雑記(アニメ系)
萌えオタでも楽しめる「THE OUTSIDER」入門
 痛いニュースさんで以下のような面白い記事が上がっていました。

素人格闘技大会開催決定 “ストリートファイト東京No.1”や“2ちゃんねらー”も参戦!

 「THE OUTSIDER(アウトサイダー)」という大会は、元プロレスラーの前田日明氏が立ち上げた大会で、「不良たちや、在野のまだ見ぬ素材を集めて大会を行ない、格闘技界の底辺を拡大する」というコンセプトでした。その響きから僕らは、『グラップラー刃牙』の柴千春のような腕自慢たちが、北関東などから押し寄せ、素人のリアルファイトを見せてくれるのだと思っていました。ところが、実際集まった面々を見ると、人相は悪い人が多いものの、「総合格闘技○年」「アマレス○年」「柔道○年」「ブラジリアン柔術紫帯」といった、プロのリングや、アマ修斗(元初代タイガーマスクが立ち上げたハイレベルな総合格闘技のアマチュア部門)の上のほうでやるにはちと物足りない経験者がゴロゴロいる、ごく普通の総合格闘技の登竜門的空気が漂ってきてしまいました。

 しかし、募集の仕方が仕方だっただけに、中には凄玉がいます。瓜田“現在20代後半の世代のアウトロー界のカリスマであり、路上の喧嘩、および関東広域での武勇伝、エピソードは数知れない。路上の喧嘩で現在活躍中の有名格闘家達をKOした、土下座させた…など数々の逸話を持っている@wikipedia”純士さんや、原田“2ちゃんねる格闘技板素人代表”桃丸さん、加藤“夜櫻会三代目総長”友弥さんなどです。彼ら路上のレジェンドたちと、人相の悪い格闘アスリートたちがリングで激突する……そう、これはリアル『ホーリーランド』として見るのが正しい大会だと思います。『バキ』や『ホーリーランド』が好きな人にはぜひ注目してもらいたいので、初心者向けの「THE OUTSIDER」、そして総合格闘技の見方入門を書いて見たいと思います。

●寝技>>立ち技の競技性
 2008年現在の総合格闘技は、立ち技だけでも、寝技だけでも勝つことは難しくなっています。何らかのバックボーンを持った上で、スタンド(立ち技)にもグラウンド(寝技)にも対応できる、総合格闘家同士の戦いがほとんどなんですね。ですから、現在の洗練された総合格闘技は、必ずしも「OUTSIDER」の完璧な教科書にはなりません。「柔道家対空手家」のような、異種格闘技によるガチンコのサンプルとしては、1993年当時の米国UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)が適当だと思います。UFCは現在の総合格闘技の礎となった大会ですが、第1回当時は、得体の知れない有名無名の格闘家たちを金網に閉じ込め、1対1でガチンコをさせるバイオレンス性の高い大会でした。カラテ・ジュードー・スモウ・ニンジャなどが金網で戦う、リアルストIIというべき大会だったのです。第1回は体重制限なしのワンデイトーナメントだったのですが、優勝したのは小兵のホイス・グレイシー。当時、ブラジル国外では誰も知らなかったグレイシー柔術の使い手がUFCを制し、「兄のヒクソンは私の10倍強い」と発言したことから、グレイシー幻想はスタートしたのです。

 では、なぜホイスは軽量のハンデを乗り越えて、優勝することができたのでしょうか。1つは、総合格闘技の原型となった「バーリトゥード(VT)」はブラジルで開催されており、グレイシーは「バーリトゥードで勝つことを修練した」柔術家の集団だったからです。町道場の腕自慢の中に、競技を知り尽くし、予習を重ねてきたプロが一人混ざっていたと言ってもいいでしょう。それから大きな要素として、寝技と立ち技の関係性があります。こと、総合格闘技において、「寝技しかできない」人間と「立ち技しかできない」人間が戦えば、基本的に寝技使いが優位です。それはそれぞれのフィールドで、できることを考えればわかりやすくなります。

 スタンドで向かい合っている場合、打撃系選手は優位です。一方、寝技系の選手は、タックルで倒したり、引き込んだりといった手管で、相手を自分のフィールドに引きずりこむ選択肢があります。
 グラウンドでの攻防になった場合、当然寝技系選手が優位です。一方、立ち技系の選手は、もがいてラッキーな脱出を狙うしかありません。

 寝技系選手は、「スタンド→グラウンド」へと持ち込むための投げ・タックル・引き込みといった技術体系を持っているのに対し、立ち技系の選手は、「グラウンド→スタンド」への移行は、基本、ルールの助けを借りるしかありません。寝技系の選手は、一度寝かせた素人を立たせてはくれませんから。さらに立ち技の選手は、目潰し・金的・肘打ち・脊髄への攻撃といった、極めて効果的なオプションの幾つかをルールによって封じられています。もちろん、それは安全面を考えれば当然なのですが、極真空手をバックボーンにリングスなどにも上がった喧嘩屋ジェラルド・コルドーは、執拗な目潰しでホイスの寝技に対抗しました。そのゴルドーは95年の国内バーリトゥード大会で、中井祐樹選手の右目をサミングで失明させ、事実上リングを追われることになるのですが……。

●倒す技術・倒されない技術 
 打撃選手は立っている間に倒すしかなく、タックルに入ってくる選手に対しては、出会い頭で潰せなければ勝利は難しい。こうした打撃系<<寝技系という初期VTの流れは、必然的にひとつの潮流を生みました。それは、「倒す技術」をもった選手の台頭です。先ほど、「寝技に入ったら、グラウンド選手は素人を逃がさない」と書きました。しかし、ヴァーリトゥードには、「相手に馬乗りになって、相手をたこ殴りにする(そして相手が後ろを向いてしまったところを絞め技で仕留める)」という「打のフィニッシュ」も存在しました。グラウンドで相手を極めること、そしてグラウンドで馬乗りになって殴ること。そのフィニッシュに共通しているのは、「相手を倒してグラウンドに持ち込み、自分にとって有利な体制をとる」という過程です。そのため、やがてヴァーリ・トゥードでは「相手を倒す技術」が重視されるようになったのです。

 ここにきて、ブラジリアン柔術に強力なライバルが現れました。それが、アマレス選手たちです。アメリカではアマレスは花形スポーツであり、分厚い選手層に支えられたスポーツエリートの宝庫です。そして彼らは、「組みついて、倒し、相手を制圧する」技術にかけてはスペシャリストでした。もちろん、アマレスラーたちに、関節技を極めるテクニックはありません。しかし、完全にポジショニングを制してしまえば、付け焼刃のパンチを上からゴツン、ゴツンと落としているだけで、相手は壊せます。なんせかれらは100キロの筋肉の塊なのです。「倒す、上になる、殴る」。この、シンプルな方程式は、一時期VT界を席巻しました。

 しかし面白いもので、選手たちは環境にあわせて変化します。アマレスラーの進化に追随するように、今度は打撃系選手・ストライカーもまた、別系統の進化を始めたのです。それは、「タックルで倒されない技術」の習得です。千変万化の寝技の攻防や、相手の上を取るポジショニングなどは、長い修練を重ねる必要があります。しかし、ストライカーの中に、コロンブスの卵的発想が生まれたのです。「倒したり、極めたりする技術は必要ない。なぜなら俺たちはスタンドで殴って倒せるから」という。彼らは、タックルを“切る”技術を集中して習得しました。重心を低く保ち、下半身を後ろに滑らせながら、がぶるようにしてこらえるような技術ですね。また、タックルに入ってくる相手に、カウンターで膝を合わせる技術も発達しました。こうした、「倒しに来る相手への対処法を身につけたストライカー」の完成形のひとつが、ミルコ・クロコップ選手です。このように、「倒されない技術を持ったストライカー」「グラウンドでパンチを手に入れたアマレスラー」「総合的な技術を身につけた柔術系選手」などが入り乱れているのが今の総合格闘技です。

 ですから、選手のバックボーンを見て、その選手の得意とするスタイルを想像できるようになると、こうした未知の選手同士の観戦も面白くなります。アマレス選手と空手家が戦うときは、アマレス選手がタックルで倒して陵辱するか、倒される前に、空手家が打撃で叩き潰すかが見所になるわけです。同じ倒すムーブでもアマレスの「タックルで倒す動き」、柔道の「投げ、崩す動き」、ブラジリアン柔術の「引き込み、下から極める動き」など色々な違いがあるので、そこも見所です。ですから、「総合格闘家」という肩書きだけの人たちは正直面白みがないのですが……ま、そういう時は「格闘家対不良」といった視点を探すと楽しみやすいと思います。

●前田日明の見方
 さて、「THE OUTSIDER」を見る上でもうひとつ欠かせないのが、プロデューサーである前田日明というおっさんの存在です。このおっさんを知っているかどうかで、「THE OUTSIDER」という大会のコク深さが変わってきます。ただ、ここで前田日明論をぶちはじめると日が暮れてしまうので、前田日明エピソードの数々を列挙するので、どういうおっさんが、においをよみとってもらえたらと思います。

・在日韓国人三世として生を受ける。(後に帰化、日本刀と零戦をこよなく愛するコテコテの右寄りのおっさんに)
・「肉が食えるから」という理由で新日本プロレスに
・より格闘技性を追求した「UWF」に参加するが、佐山聡ら他主要メンバーと決裂して解散。後に新日本プロレスにユーターン
・223cmの巨漢レスラー、アンドレ・ザ・ジャイアントに制裁ガチンコ試合を仕掛けられるが、前田戸惑いながらもアンドレの膝をズタズタに破壊、アンドレは試合放棄、試合映像はお蔵入りに
・長州力に背後からガチ蹴りを入れ、顔面を骨折させる。世に言う「長州顔面蹴撃事件」により、新日本プロレスを解雇される
・第2次UWF立ち上げに参加するが、フロントともめまくって解散
・リングスを立ち上げ、リングスネットワークのロシア・グルジアなどから、過去・現在の格闘技界を背負う多くの格闘家を発掘する
・ライバル団体・パンクラスの社長の胸倉を掴んで訴えられる
・批判的な記事を書いた雑誌編集長を、女子トイレに監禁した
・ライバル団体・UWFインターの安生に背後から殴られて失神した
・アメリカでスタッフの女性とトラブル、殴打して逮捕された
・「K-1 PREMIUM 2007 Dynamite!!」にプレゼンターとして登場するが、何を思ったのか田村潔司にトロフィーを投げつける
・あ、忘れてたけど、現役最後の試合では、1987年から2000年まで国際試合不敗を誇ったグレコローマン・レスリング“人類最強の男”アレクサンドル・カレリンと対戦。内容はともかく、カレリンを引っ張り出した前田の政治力は非凡。ちなみにカレリンは、『グラップラー刃牙』のアレクサンダー・ガーレンのモデル

 こんなおっさんが「不良少年に夢とチャンスを」とか言って大会を企画しているのですから、これはもうお好きな人にはたまらないと言えるでしょう。参加アウトサイダーズの誰かが、解説席の前田に手を出したりしないかな、そして前田が殴りつけて新聞沙汰にならないかな……そんな楽しみ方もできるのが「THE OUTSIDER」なのです。

2008/03/16 14:15 | Comments(0) | TrackBack() | 格闘技

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