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2026/01/22 11:46 |
茅原実里に見る“歴史と物語の共有”の強み。
 内容的に、「“平野綾ブーム”に、乗れない自分。」の続きになります。前項ではそう書いたのですが、書いていてふとはて……と思ったのが、個人的な話として、茅原実里さんの一連の流れには、結構乗れているのはなんでだろう、ということです。言うまでもなく平野綾さんと茅原実里さんは揃って『涼宮ハルヒの憂鬱』が大ブレイクの契機です。そして、茅原さんの所属事務所はavex、CD関連の展開はランティス……というのは、結構メジャーな側から攻める方向性ですよね。それをすんなり受け入れることができているのは何故か、というのを考えてみました。

 茅原実里さんのこれまでの足跡を振り返ってみると、2003年4月に、「國府田マリ子のGM」アシスタントオーディションに選出されたのが、表舞台に上ったきっかけです。しかし実際に多くの人が「茅原実里」という名前を認識したのは、2004年4月、『天上天下』棗亜夜としての声優デビューではないでしょうか。ここから12月にアルバム『HEROINE』をリリースし、翌年「茅原実里の負けないラジオ」「茅原実里のいけないラジオ」を始め、軌道に乗るまでが、茅原実里第一期と言ってもいいと思います。この、avex色が強かった頃の茅原さんに対するオタク業界からの評価は、必ずしもポジティブではなかったように思います。時期的に、オタク界隈では「avex的なもの」に対する抵抗感がまだ存在していましたしね。

 その後、いわゆる「俺たちの側の人間の象徴」と言ってもいい、桃井はるこさんの起用で、いわゆるavexに対する食わず嫌いは相当解消された気がするのですが、それはまた別の話ということで。

 そして2006年に『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希役で、声優としての大ブレイクを果たすことになるのですが、歌手・茅原実里がクローズアップされるのは、翌2007年を待たなければなりません(ただし、歌手・茅原実里の方向性を決定したのは、2006年のハルヒキャラソング「雪、無音、窓辺にて。」だと思います)。確か2006年末頃には、公式サイトに「Re-start」というキャッチフレーズが印象的な、歌手としての茅原実里再始動を予告する告知が掲示されていたように思います。明けて2007年1月、ランティスから「純白サンクチュアリィ」が発売され、歌手・茅原実里の第二期がスタートします。売り上げにすると、

純白サンクチュアリィ 6746枚 35位 4回 2007/1/24(シングル)
君がくれたあの日   9727枚 20位 4回 2007/6/7(シングル)
Contact       22881枚 11位 5回 2007/10/24(アルバム)
(参考:声優CD売上データベース)

 と繋がります。通常、シングルとアルバムの売り上げを併記するのはデータとしての正確性を欠くことが多いのですが、茅原実里さんの場合は2007年中、ラジオ媒体などで「純白サンクチュアリィ」を代表とするシングル曲がかなりヘビーローテーションされており、大きな知名度を持っていました。「Contact」の大ヒットは、そうした楽曲に興味を持っていた層が、ベストアルバムを買う感覚で購入した面が大きいと思いますので、この3枚の売り上げは1本の線上に置いてもいいように思います。

 そして、順調にファン層を拡大している茅原さんの人気を考える上で、見落としがちなのが2006年のハルヒ以前、必ずしも声優ファンからの風向きが優しくなかった時代の茅原さんの存在ではないか、てのが今回の主旨になります。この時代の茅原さんに対するファンの対応は必ずしも芳しくありませんでしたが、当時のアンテナの立ったファンなら、「バッシングも多いけど、この人はいい子だし頑張ってるなぁ」という印象を持っていたのではないでしょうか。そして、そうした(相対的に)不遇な時期に、腐らずに継続して頑張っていたという事実は、その個人が持つ「物語」に厚みや深みを与えるものだと思うのです。2005年に「ずっと...一緒/負けない」をリリースしてから2年間、茅原さんに個人名義でのCDのリリースはありません。歌が大好きなんだけど、個人として歌う場が与えられない。だったら、路上で歌おう。茅原さんの秋葉原での路上ライブは、『涼宮ハルヒの憂鬱』の放送が始まる2006年4月まで続きました。こうした、「必ずしも結果には繋がっていないけど、頑張り続けた日々」というのを踏まえたうえで、

発売前夜
純白サンクチュアリィ

 あたりの、純白サンクチュアリィ発売前後の茅原さんの日記とかを見ると、何かゆさぶられるものがありませんか。不遇な時代があるからこそ、支えているファンからすると、「Contact」の大ヒットで「やっと彼女の頑張りが報われた」という種の喜び、カタルシスは大きいのではないでしょうか。ライトなファンを広げるのとは別のベクトルで、「強固で忠誠度の高いファンを掴む」という方向性では、このファンとの間での「物語と時間の蓄積の共有」が、物を言う気がします。わかりやすく言い換えれば、「自分が応援するうちに、一緒に育って大きくなった感」ですね。以前アイドルマスターについても近いことを書きましたが、この、対象と一緒に苦労を重ねた時期というのは、ブレイク後の演者とファンの繋がりにおいて、宝になるのではないでしょうか。

 ここで前項の“平野綾ブーム”に話を戻したいと思うのですが、平野さんにとって幸運であると同時に、逆説的にハンデになりうるのが、そのブレイクが、あまりにスムーズだったことではないかと思うのです。「冒険でしょでしょ?」と「ハレ晴れユカイ」を引っさげて平野綾さんが登場したとき、平野さんは僕らにとって既に“あの涼宮ハルヒの平野綾”でした。いわば、僕らの目の前に登場したときと、ブレイクした時期がほぼ同時期なんですね。その「頂点に向けて上り詰める過程」をファンが目にしていない状態で、売り上げ10万枚突破、といった形がババンと表れ、そこに周辺企業や一般メディアが眼をつけ……といったサイクルに突入したため、「自分たちファン(だけ)が関与し、支えた時期」が極端に短いことが、その流れに乗り切れない状況を生み出しているのかな、と思うのです。

 もちろん、平野綾さんが苦労していない、というつもりは毛頭ありません。僕はたまたまですが、2002年ごろに「深夜戦隊ガリンペロ」という深夜番組で、平野綾さんがSpringsの一員として「涙にバイニー」を歌っているのをよく眼にしていましたし、『キディ・グレイド』も見ていました。しかし、多くのファンの中で、「涼宮ハルヒ以前」と「以後」の平野綾さんは、認識の上でかなり断絶しているような気がします。30近い僕の周辺でもそうですから、若いファンからすれば、涼宮ハルヒ以前の平野さんは、ほとんど意識に上らないものでしょう。

 苦労という意味では、体調を崩すほどの極端な多忙は、まだ10代の女性にとってかなりの負担であったことは想像に固くありません。しかし難しいのは、「仕事が多く、忙しすぎて自分の時間もない」というのは、本質的にファンにとっては共感しにくい苦労なのです。なぜなら、ファンなら応援する相手に無理はしてほしくないと思いながらも、たくさんの番組で好きな声優の声がきけたり、色々な歌が聞ける……というのは、ファンにとっては「嬉しい」ことだからです。アーティストの「つらい・大変」がファンの「嬉しい」になってしまうのは皮肉なことです(だからこそ、演者の側も頑張れる、という面はあると思いますが)。一方、歌いたいけど歌えない、すごくいい芝居をするのに役に恵まれない……といった苦労は、ファンの側も「もっと活躍してほしい」というベクトルで共感できるので、物語と思い入れの蓄積の上ではよりプラスなんですね。

 もちろん、早い段階でブレイクしたというのは、間違いなく大きな武器です。「若さ」の持つ力というのは、スペースクラフトのような芸能系(+劇団若草のような子役に強い劇団系)が持つ大きなアドバンテージです。芸能を志す多くの人にとっては、うらやましすぎる贅沢な悩みといえるでしょう。しかし、最初からトップランナーというのは、間違いなく、その人にしかわからない難しさ、つらさがあると思います。ちょっと売り上げが落ちると、すぐに落ち目だなんだと騒ぐ人がでるでしょうしね。平野さんにとっていいお手本になるのは、声優界ではやはり水樹奈々さんだと思います。僕の見方では、水樹さんは「あまり物語を必要としない」タイプの声優系歌手です。純粋に楽曲とライブパフォーマンスの圧倒的な説得力で見るもの・聞くものをねじ伏せるスタイルは、よりメジャーな世界を志向する上では間違いなく一番の近道だと思います。もちろん、その域に達するために必要な努力と才能は、並大抵なものではないと思いますが。

おまけ そういう「物語を背負った声優」という立ち位置で考えると、数年以内に明坂聡美さんあたりが平野綾さんを脅かすライバルストーリーというのは成立しうると個人的には。現状では妄想の範囲を出ませんけれど。
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2007/12/10 15:10 | Comments(2) | TrackBack() | 雑記(アニメ系)
“平野綾ブーム”に、乗れない自分。
 今一番勢いがある、あるとされている声優って、誰でしょう。話題の旬としてはゆりしーな気もしますが、勢いという意味では、やはり平野綾さんじゃないでしょうか。写真集刊行、3ヶ月連続CDリリースと、今一番風速が強い若手声優さんなのは間違いないと思います。実際、僕も半年ほど前、メーカーの人とお話していて「今中里さんが一番注目している声優さんって誰ですか?」と聞かれたときは、「一般論としてはやっぱり平野綾さんだと思います」と答えました。

(その後には「個人的にはアイマスとかに出てる今井麻美さんですね。歌えてラジオやトークも回せるし、今フリー(当時)なんでおすすめっすよ」的な発言が続いたり、半年後にそのメーカーの作品にミンゴス起用が発表されて中里涙目ww といったサイドストーリーもあるのですが、それは今回は関係ないのです。)

 ハルヒもらき★すたも大好きな作品ですし、SOS団の3人娘のライブを取材するために、昨年はアニメーション神戸への自腹取材を敢行したぐらいです。ここを誤解されると無茶苦茶になるので念を押しますが、今回論じるのは今の“平野綾ブーム”の作られ方についてなので、予めご了承ください。

●平野綾はNo.1声優アイドルなのか
 現在、一般層に対して一番露出が激しい女性声優は、平野さんだと思います。男性向けの一般誌にグラビアが掲載されたり、小特集が組まれたりしていますね。『ハルヒ』でブレイクした若手人気ナンバーワンアイドルで、CDは「ハレ晴レ」や「もってけ」が10万枚を越え……といった枕から、その若さとビジュアルの良さをプッシュしていくのがお決まりです。平野さんのビジュアルを含めたキャッチーさ、かわいらしさは、声優に興味のないオジサン層に対しても通用するということでしょう。

 まず、若手声優という括りでみた場合、その評価は的確なものだと思います。こと、声優という仕事において、その人の一生を代表するような作品に出会うことはそうはありません。『涼宮ハルヒの憂鬱』そしてそこから続く『らき★すた』の流れをもって、平野綾を若手の注目株ナンバーワンとみなすのは、至って自然な流れです。しかし、最近のそうした露出の際の切り口を見てみると、若干ニュアンスが違います。たまたま手元にあった「SPA」12月4日号を引用すると、こんな感じ。

 彼女は「声優」である。写真を見て「声だけなんてもったいない!」と、素朴すぎる感想を抱いた読者もいるだろう。だが、ご心配召さるな。アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のハルヒ役で大ブレイクし、人気・実力ともにトップ声優の座を手に入れた彼女は、今や写真集に歌手活動にと、旺盛に活躍の幅を広げており、知名度も急上昇中なのだ。

 と、平野綾の活躍は狭い声優の枠に留まらないぜ! と言わんばかりの内容です。しかし、この声優の枠の“外”での活動に関わる部分に、僕は妙にバブルな感じというか、「求められている規定路線としての平野綾像」みたいなものを感じて、立ち止まってしまうのです。

●困ったときは数字を見よう。
 平野綾人気を語るベースとして「ハレ晴レ」「もってけ」が引き合いに出されることも多いですが、この京アニ作品という奴が曲者でして。『ハルヒ』と『らき☆すた』は、あまりにも規格外に売れすぎるのです。キャラクターの役の大きさに関わらず、キャラソンが安定して15000~25000枚出るのですから(流石に最近の脇の脇、になってくると落ち着いていますが)、参照にする方としてはお手上げです。ギャラクシーエンジェル2のように、平野さんが関わっていてもキャラソンが不振に終わったタイトルもありますので、ここはやはり、平野綾個人名義でのCDをベースで考えます。これまで発売された平野さんのCDを並べてみると、

タイトル 推定枚数 最高 登場 発売日
Breakthrough 2076枚 79位 2回 2006/3/8
冒険でしょでしょ? 64699枚 10位 27回 2006/4/26
明日のプリズム 15469枚 13位 5回 2006/9/6
LOVE★GUN 20689枚 6位 7回 2007/10/10
NEOPHILIA 14984枚 17位 4回 2007/11/7
(参考:声優CD売上データベース)

 という感じです。デイリーを見る限り、MonStARはNEOPHILIAに近いカーブを描きそう? 冒険でしょでしょ?発売時点での平野綾さんの知名度を考えると、これは流石にハルヒ効果。現時点での平野綾さんが持っている数字は、15,000~20,000というところでしょうか。声優に軸足を置いた歌い手の中では、大体水樹さん、田村さん、堀江さんに次ぐぐらいの数字と考えていいと思います。しかしこうして並べると、個人名義のシングルの少なさというか、明日のプリズムから3枚同時リリースまでに1年以上のブランクがあることに驚きます。それだけ、あまりにも『ハルヒ』と『らき☆すた』関連商品が売れすぎ、平野さんが忙しすぎたという証左でもありますが。

●ライブパフォーマンスの視点から
 さて、この辺の数字を見ると、声優としては一線級の売り上げをあげてることはもちろんわかります。では、なぜ僕が現時点でナンバーワンアイドル声優歌手的なパッケージが用意されてることに違和感を覚えるかというと、結局のところ、まだ歌手としての平野さんの全体像が、僕には掴めていないからなのです。平野さんとそのチームが志向する楽曲の方向性に関しては、ハルヒの中でも平野綾色が強い「God knows」「Lost my music」も併せれば、明確に伝わってきます。しかしそこから先を考える上で、どうしても個人的に外せないのが、平野さんの体力的なことです。

 平野綾さんを間近に見たことのある人ならわかると思いますが、細い。まじ細い。かわいい。超かわいいです。なのですが、僕がもし平野さんのプロデューサーだったら、第一声は「ご飯を食べよう」です。パワー系のボーカリストとしては、あまりに華奢なんですね。実際に一線でガンガンライブをやってる歌手の人を見ると、やっぱ鍛えてるんですよ。榊原ゆいさんとか、非常にしなやかなアスリートの身体をしてますよね。水樹奈々さんの最近のリリース曲に関して、似た雰囲気の曲調、テンションの曲が多いと批判する人がいます。が、あのテンション、あのパワフルな歌唱を4時間続けるとかいうことは、常人にできることじゃないんですよ。

 僕も平野綾さんのミニライブを何度も見てますが、やはり、ロック系の激しいナンバーは、2曲~3曲が(少なくとも数ヶ月前の時点では)上限な感じで、GA2のライブなどでは、かなり無理をして満身創痍で駆け抜けている印象がありました。ダンスを交えながらのライブパフォーマンスはカラオケとは違い、本当に消耗度が激しいのです。ロックナンバーとなれば言わずもがな。年頭の平野さんの体調不良もあり、ソロでのフルライブ完走はまだ難しいという判断もあって、アルバム発売は見送られているのではないか、とも思います。

●アルバムの肝はむしろ非シングル曲
 もちろん、だからと言ってライブができないわけではありません。前項で書いたのは、今シングル攻勢でリリースされているような「平野綾らしいロックナンバー」だけでは、ソロのフルライブを成立させるのは難しい、ということです(流石に口パク多用ってわけにもいきませんしね)。しかし、では超人的な体力がある人しかソロライブができないかといえば、答えはNOです。特に声優さんの場合、田村さんや堀江さんが入念な筋トレや走りこみをしていると思っている人はあまりいないでしょう(笑)。実際のライブでは、バラードあり、MCあり、映像あり、場合によっては休憩ありで、ずっとフルスロットルで飛ばしているわけではないのです。

 ミリオンを売ったりしない普通の歌手の活動は、ライブツアーを行ない、その入場料収入とグッズ物販で収益を上げる構造になっています。ですから、アルバム楽曲やシングル曲リリースの構成は、当然ライブを意識することになります。つまり、今後いずれ発売されるであろうアルバムはライブを構成する上で、「現状の激しめのロックナンバー」とバランスをとる、バラードなどの曲がむしろ重要になってくるわけです。そっち方面の楽曲という意味では、「NEOPHILIA」に収録の「forget me nots...」などが該当すると思いますが、さすがにサンプルとしてちょっと足りない。ミディアムテンポやスローバラードなどでどれぐらいデキるのか、ソロでのMCでどれぐらい客席を引っ張って惹きつけられるのか。アルバムが未発売で、ソロでのフルライブが未開催の時点では、あまりにも判断材料が足りないのではないでしょうか。

 材料が出きっていないってことは、巨大な可能性と同義でもあります。平野さんのポテンシャルへの期待は大きく、実際にソロライブを見たら、自分が圧倒され、叩きのめされて帰ってくる可能性も高いと思います。にしても、ソロ歌手としての彼女は、まだ走り始めたばかりじゃないですか。この時点で、容姿と若さというスター性に目をつけて、「ナンバーワン声優・歌手」という枠組みを必要以上に煽るのはどうかと思うんです。もちろん僕だって全くの素人ではありませんから、作品絡みで10万枚以上のヒットを複数飛ばすような素材を、周囲の企業や人間がほっとくはずがないのはわかりますし、それを煽り立てることで産業が成立してるのだってわかります。ただ、一般誌のグラビア露出なんかを突破口に、外側から“スタア人気”みたいなものが固められていくのは、なんとなくしっくり来ないんですよね。

 これから平野さんはどういう活動をアルバムやらライブで見せてくれるんだろう、と自分の目で見極めようと楽しみに待ち構えているところに、いつの間にか外的な評価を押し付けられているような、妙な息苦しさを感じるんですが、僕だけでしょうか。批判もあると思いますので、バシバシ突っ込んでもらえると幸いです。(最初、まるでアルバムがすぐ出るよーなニュアンスになってたので、内容を修正しました。)

2007/12/08 01:38 | Comments(12) | TrackBack() | 雑記(アニメ系)
NHKの迷走 声優・アニソンは武器になるのか
2007年度、紅白歌合戦の出演者が発表されました。噂されていた秋葉原枠は、既報の通り「中川翔子・リアディゾン・AKB48」がアニソンメドレー的なものを歌う、というものに落ち着きそうです。視聴率が低迷している紅白にとっては窮余の策、掴んだ藁が“アキバ系”だったのでしょう。「今日は一日アニソン三昧」の聴取率の良さも後押ししているのかもしれませんね。

まず、このチョイスに対する最も一般的な反応は、「これ、誰が見たいの?」でしょう。現時点のAKB48がいわゆる紅白にふさわしい活躍をしているかといえばNOですし、リア・ディゾンがアキバ枠なことについては、担当者の頭蓋の中身を一度調べてみたい。アキバ系で客寄せという企画とは別に、リア・ディゾンを客寄せに…という案があって、じゃあ一緒にしちまえってことでしょうか。担当者の“いわゆるアキバ系”に対する認識の甘さが如実に出たチョイスではないかと思います。

中川翔子(しょこたん)に関しては、個人的に正解だと思いますが…。紅白歌合戦には多くの演歌歌手が出演し、紅白に(おそらく)欠かせない要素になっています。熟年層へのアピール、年末の風物詩としての伝統など様々な理由があるのでしょうが、紅白という空気を形作る上で重要な要素として、“彼らにとって紅白が非常に重要で、大きい存在”であることがあると思います。演歌歌手にとって、紅白出場は未だ大きなステータスであり、出場後はCD売り上げやコンサートの動員力が如実に違ってきます。なんだかんだ言っても、演歌を好む年配層にとっては、紅白の神通力は未だ健在なんですね。ですから演歌歌手は紅白に出場したいモチベーションがあります。こうした、「あの日本人の憧れの紅白歌合戦に出たい」という前提がまだ生き続けているジャンルだからこそ、演歌は紅白にとって必要不可欠なのです。その点、中川翔子は、「父親の中川勝彦が果たせなかった紅白に出る」という物語を持っています。このご時世、「紅白に出たいです!」と積極的にメディアで発言してくれる一点でも、NHKは頭を下げてしょこたんに出てもらうべきです。

とはいえ、この企画がオタク界隈にアピールするかと言えば、答はNOでしょう。小細工無しに、中川が「空色デイズ」をフルで歌ったほうがよほどその層へのアピールは強かったはずです。もっと言えば、「アニソンを歌えば、オタクは喜ぶ」という認識が前提から間違っているのです。重要なのは、何を歌うのかではなく、誰が、どのような形で歌うのか。

オタク系に眼を向けたこと自体は、悪くない着眼点だったと思います。なぜならオタクにとって、「世間に自分の好きなものの良さを認めさせたい」という欲求は心の奥に根強くわだかまっているものであり、アニソン界隈の歌手にとっても、未だ紅白は門戸を閉ざした舞台だからです。認められて紅白に出るということはその界隈の人間にとっては特別なことであり、出演者・ファンが場を特別なものと感じる想いそのものが、紅白という枠を特別たらしめるのです。ですから、リア・ディゾンまで含めてパッケージにして、アニソンを歌わせる……といった今回の“安い”扱いは、完全な失策だったと僕は考えています。オタクは一度自分たちの仲間と認めた物には非常に優しいですが、軽んじられることに対しては敏感です。今回の扱いでは、コミケ帰りのオタクを惹きつけることはできないでしょう。

じゃあどうすれば良かったの、てことだと、僕は何のひねりも企画もなく、水樹奈々を出して「MASSIVE WONDERS」歌わせれば良かったと思います。楽曲的には「ETERNAL BLAZE」の方が届く気もしますが。この、何のひねりもないというところが重要で、今オタク層が真に求めているのは、「声優やアニソン歌手がテレビに出て歌うこと」ではないのです。「声優やアニソン歌手がテレビに出て、歌い手としてごく当たり前の敬意と扱いを受けること」なのです。声優の歌番組出演自体はそれほど珍しいものではなくなっており、民放での十年一日のオタクさらし演出にファンの側もうんざりしています。だからこそ、なんのひねりもなく、ごく普通に出演させて、ごく普通に歌わせることが一番効果的な「NHKならでは」になったと思うのですけどもね。一般人の評価なんて気にしないよ、てのがオールドオタクのスタンダードだとは思うんですが、それでも紅白で水樹奈々が歌って、年明けのオリコンで「MASSIVE WONDERS」が再チャートインしたよ、とか聞いたら、やっぱりどこか誇らしい気持ちになると思うんですよね。

アニオタとしての僕個人の場合、AKBの某がアニソンを歌うよりも、T.M.Revolutionが持ち歌を普通に歌うほうが嬉しいと思います。西川さんが、“こちら側の人間”だと考えているからです。オタクをターゲットにする場合、そうした心情的・空気的なレベルでオタを味方につけるぐらいまでいかないと、デメリットのほうが大きい気がしますね。そのためには、結局のところ対象に対する愛と理解は必須なんだと思います。今回のしょこたん+リア+AKB48が失敗して、「やっぱりオタク向けじゃ武器にならない」といった理解をされるのは、非常に抵抗がありますね。悪いのは素材ではなく、調理人の腕だと思います。

おまけ ハロプロオールスターとAKB48が同じ番組に出るのは、ちょっと興味があります。

2007/12/05 12:30 | Comments(20) | TrackBack() | 雑記(アニメ系)

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