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2017/07/28 03:35 |
「Prism」ってキャラソンなの?
 最近、オリコンチャートを声優さんのCDやアニソンが席巻することが珍しくなくなってきました。先だって水樹奈々さんが、ついに念願のオリコン1位を達成したことが大きなニュースとなりましたが、今週も「桂ヒナギク with 白皇学院生徒会三人娘 starring 伊藤静 with 矢作紗友里&中尾衣里&浅野真澄」が歌う「本日、満開ワタシ色!」がオリコンウィークリー7位に、アルバムでも「鏡音リン・レン featuring 下田麻美」の「Prism」が26位に新規ランクイン。桜高軽音部の「Don't say“lazy”」や水樹奈々さんの「ULTIMATE DIAMOND」もしっかり上位に残って存在感を発揮しています。

 このような「声優・アニソン系CDのランクイン」の嚆矢となったのは、やはり林原めぐみさんでしょう。1991年頃から本格的な歌手活動を開始した林原さんは、97年のアルバム「iravati」でオリコンの記録では27万枚を販売。女性声優の歌手活動自体がほとんど無かった時代に道を切り開いてのこの数字は、やはり不滅のものといえるでしょう。当時の林原さん関連CDの売り上げには、ほぼ全て僕の1枚が含まれています(笑)。そして林原さんが入り口の扉を開いたあと、「ライブ」での活動を精力的に行い、声優アーティストというポジションを確立したのが國府田マリ子さんであり、椎名へきるさんです。

 その時代に比べて、アニソンの上位ランクインが珍しくなくなった今、アニソン・声優CDがより売れているのか? と言えば、そんなことはありません。消費者が音楽を購入するルートが多様化した結果、「音楽CD」というマーケットが縮小傾向にあります。しかしそのマーケットの中で、アニソンは以前とそれほど変わらず売れているために、相対的にアニソンのチャートにおける番付が上がってるんですね。そうした中、声優・アニソン界隈で一番売れているジャンルは? と言えば、キャラソンです。そして一番売れないジャンルは、と言えば、これもまたキャラソンなのです。

 ここ数年の男性向けキャラソン市場の最大の特徴は、強烈な寡占化です。『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『けいおん!』といった、京アニ作品を中心とした作品のCDを“みんな買い”、それ以外は“みんな買わない”という、特異な右へ倣え型の市場が形成されているのです。この流れに非京アニで割り込んだのは、最近だと『マクロスF』ぐらいでしょうか。「もってけ!セーラーふく」が17万枚売れた、「涼宮ハルヒの詰合」が13万枚売れたと聞くとキャラソンが売れるように錯覚しますが、実際は一般のキャラクターソング市場では、歌い手にかなりの人気声優を起用しても、1000枚~3000枚が上限というのが現状です(※記載を若干変更しました)。歌い手ではなく作品に依存するのがキャラソンの売り上げなんですね。

 だからこそ、“固定ファン”を抱え込んだ作品というのは強く、『アイドルマスター』や『ハヤテのごとく!』のように、コンスタントにキャラソンが売れるタイトルというのは極めて例外的です。主題歌に限れば、『とらドラ!』『みなみけ』などの数字の取れるタイトルもあるのですが。

 と、売り上げ動向に興味がある人には「基礎知識」と言えることを書き連ねてきたのですが、なぜ今こんなことを書いたかと言えば、下田麻美さんの「Prism」のオリコン26位、7000枚という数字をどう受け取っていいのかに戸惑っている人が結構いるように感じたからです。若手声優のデビューアルバムと考えた場合は、7,000枚という数字は破格の大成功です。しかし、初音ミク界隈のCDと考えると、オリコン上位ランクインはもはや珍しくありません。ですが、「ボーカロイド楽曲を中の人がカバー!」という事例は史上初めてですし(※KAITOの風雅なおとさんによる「卑怯戦隊うろたんだー」カバーが先とのご指摘を頂きました。)、そもそもボーカロイドの市場における市場価値という意味では、現時点では緑の子と黄色の子の間には大きな隔たりがあるのが実情です。ですが、しかし。いろんなファクターが右往左往しており、受け取り方が非常に難しい結果になっているなぁというのが率直なところです。

 個人的な捉え方でいえば、「Prism」は“広報チャンネルとしてボーカロイドを使った”下田麻美さん個人名義CDと考えています。今の時代、CDを売るためには、「広さ」と「高さ」の両方のハードルを超える必要があります。まず、こんなCDがあり、こんな魅力があるという、商品の存在そのものを「広く」知らせることが条件になります。TVアニメの主題歌タイアップなどは、そのもっともシンプルな近道です。しかし、楽曲と商品の存在を広く知らせても、そこから先、「その商品に対し1000円~3000円の投資をしたい」と思わせる高さのハードルがあります。その高さを突破するのに必要なのが、「楽曲自体の力」「歌い手の魅力」「歌い手に対するサポーターとしての支援」です。

 このベクトルの違うハードルを越える上で、「幅広く宣伝する」という部分で、ボーカロイドを中の人がカバーするという形式をとることによるメリットは計り知れません。そして、楽曲の魅力と言う点でも、数限りないボーカロイド楽曲の中から、数十万、数百万といったアクセスの支持を受けた楽曲を選別してチョイスできるメリットは非常に大きな物があります。

 ただ、ボーカロイドによる支援が期待できるのは、潜在的な顧客層に対するファーストコンタクトと、楽曲の素材が出揃うまで。そこから先、楽曲にどんな味付けをして、どんな風に歌うか。曲に込めた想いをどんな風に取材などで聞き手に届けるか、それらは下田さん個人の領分だと思います。いわゆる「キャラクターソング」と「Prism」との最大の違いは、明確な形を持った「元キャラクター」というものが存在しないことです。公式にはパッケージイラスト以外を用意しないボーカロイドは、作り手と聞き手の数だけ違った顔を持っています。その中から、“たくさんのリンレンを愛する人々の中にあるイメージ”、そして“下田さんの中にあるリンレンのイメージ”を掬い上げ、形にする作業というのは非常にクリエイティブで、どちらかといえばゼロからキャラクターを作り上げる舞台に近いものだと思います。たぶん、予備知識の無い人にリンレンの設定画と「Prism」を渡して聞いてもらったら、歌手としての評価よりも前に「声優さん(役者)ってすげーな」という感想を持つのではないかと思うのです。ある意味完璧な歌い手であるボーカロイドに対して、人間ならではの演技・芝居というアプローチをぶつけるのは、個人的には非常に正しく、面白いアプローチなのではと、思います。

 「Prism」は個人名義の音楽CDなの? キャラクターソングなの? という区分けに関しては、どっちでもないんじゃね、というのが正直なところです(笑)。むしろドラマCDや朗読といった、役者として演技をするCDに近いのではないかと。その表現形態のひとつが、たまたま“歌”だったという。たびたび引き合いに出しますが、釘宮理恵さんの一連のキャラクターソングに対する取り組みが、まさに「歌を通して演技をする」という感じだと思います。

 そんなわけで、「Prism」は、ボーカロイドという存在を媒介することでたくさんの人に音を届けつつも、実質としての中身には下田麻美の魅力が詰まっていくという、なんだかずるっけな商品になっていると思います。ですが歌手として役者としての魅力的な下田さん、そして鏡音リンレンの楽曲という魅力的な素材があれば、それをうまくサポートしてうまいこと売るのは周りの大人たちの仕事だと思うのですよね(笑)。それでCDがたくさん売れて、僕のような「ミクは結構知ってるけどリンレンやルカの楽曲はそれほど詳しくないのよね」というにわかがリンレンの元楽曲の数々に触れるきっかけができたのですから、こういう関わった“みんなで幸せになろうよ”型のビジネスにはがんがん広がってほしいところなのです。
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2009/06/18 23:59 | Comments(6) | TrackBack(0) | 雑記(アニメ系)

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コメント

> 歌い手ではなく作品に依存するのがキャラソンの売り上げなんですね。

確かにそうですが、この二、三年水樹奈々さんのキャラソンのオリコン累計を見てみると:

迷宮バタフライ(しゅごキャラ!)  17,309
赤い情熱(ロザリオとバンパイア)  5,802
BLACK DIAMOND(しゅごキャラ!)  18,560
あなたにカプッchu!(ロザリオとバンパイアCAPU2) 4,312
SOUND OF DISTINY(WHITE ALBUM)  11,488

「1000枚~3000枚が上限」という上限はちょっと正しくないと思います。
posted by ヘイちゃん at 2009/06/19 05:22 [ コメントを修正する ]
>ヘイちゃんさん
個人的には「SOUND OF DISTINY」は、挿入歌カテゴリー(原作ゲーム歌で、ストーリーへの関わりも深い)かなと思います。
ロザパンに関しては、実数の把握が甘かったです。

で、『しゅごキャラ』に関しては、降参です。僕のアンテナでは『しゅごキャラ』はあむランミキスゥぐらいまでしか把握しておらず、水樹さんが出演してキャラソン歌っていたことも知りませんでした。ちょっとこの辺は勉強しておきます。

「キャラソン売り上げは作品人気依存」「人気声優でも、以外に低いラインで頭打ちになりやすい」という部分の論旨に影響はないと思いますので、ひとまず固有名詞削る形でご容赦ください。しかししゅごキャラで2万近くでますか。一般例に奈々さんの名前を出すのは避けたほうがよい気がしてきました。

posted by なかざと at 2009/06/19 07:19 [ コメントを修正する ]
> 「ボーカロイド楽曲を中の人がカバー!」という事例は史上初めてですし

はてなブックマークで指摘がありましたが,風雅なおとさんがKAITOの「卑怯戦隊うろたんだー」をカバーしたアルバムの方が先ですね。
posted by Kongmu at 2009/06/19 18:08 [ コメントを修正する ]
國府田とへきるは、歴史的に"声優アーティスト"の失敗例であって、
確立したというならば、それは、アーティストの方向を向くと失敗する、という教訓を残したことであって、この二人は、全く"声優アーティスト"は確立させていないと思います。
どっちもライブ行ったことあるけど。
彼女らのあと、アーティストを自称する声優歌歌いは居なくなった、と。
posted by ねこみ at 2009/06/19 19:48 [ コメントを修正する ]
>Kongmuさん
情報ありがとうございました。
本文に付記しました。

>ねこみさん
アーティストという表記が変なスイッチ押してしまったでしょうか。
成功/失敗の定義についての言及は避けますが、林原さん、國府田さん、椎名さんが「声優」「AMラジオ」「歌」という人気声優の活動の基礎を築いたことは“僕は”確かだと思っています。

posted by なかざと at 2009/06/19 22:16 [ コメントを修正する ]
ボカロファンが果たして中の人にどれだけ感心を
もっているのか?この点がいざお金を出すという事に
なると正直さっぱりわからずどれだけ売れるのかまったく
検討がつきませんでしたが、7000枚という数字は
個人的にはすごい数字だと思います。おそらく一万枚は
行くでしょう。この数字はボカロの主だった有名Pのアルバム
並の数字ですので大健闘していると思います。

ただ思ったのがアニメの世界と同じくボカロの世界も
ファン層の上限がはっきり見えてきたなと
posted by freeway at 2009/06/21 03:34 [ コメントを修正する ]

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