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2024/11/22 09:11 |
茅原実里に見る“歴史と物語の共有”の強み。
 内容的に、「“平野綾ブーム”に、乗れない自分。」の続きになります。前項ではそう書いたのですが、書いていてふとはて……と思ったのが、個人的な話として、茅原実里さんの一連の流れには、結構乗れているのはなんでだろう、ということです。言うまでもなく平野綾さんと茅原実里さんは揃って『涼宮ハルヒの憂鬱』が大ブレイクの契機です。そして、茅原さんの所属事務所はavex、CD関連の展開はランティス……というのは、結構メジャーな側から攻める方向性ですよね。それをすんなり受け入れることができているのは何故か、というのを考えてみました。

 茅原実里さんのこれまでの足跡を振り返ってみると、2003年4月に、「國府田マリ子のGM」アシスタントオーディションに選出されたのが、表舞台に上ったきっかけです。しかし実際に多くの人が「茅原実里」という名前を認識したのは、2004年4月、『天上天下』棗亜夜としての声優デビューではないでしょうか。ここから12月にアルバム『HEROINE』をリリースし、翌年「茅原実里の負けないラジオ」「茅原実里のいけないラジオ」を始め、軌道に乗るまでが、茅原実里第一期と言ってもいいと思います。この、avex色が強かった頃の茅原さんに対するオタク業界からの評価は、必ずしもポジティブではなかったように思います。時期的に、オタク界隈では「avex的なもの」に対する抵抗感がまだ存在していましたしね。

 その後、いわゆる「俺たちの側の人間の象徴」と言ってもいい、桃井はるこさんの起用で、いわゆるavexに対する食わず嫌いは相当解消された気がするのですが、それはまた別の話ということで。

 そして2006年に『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希役で、声優としての大ブレイクを果たすことになるのですが、歌手・茅原実里がクローズアップされるのは、翌2007年を待たなければなりません(ただし、歌手・茅原実里の方向性を決定したのは、2006年のハルヒキャラソング「雪、無音、窓辺にて。」だと思います)。確か2006年末頃には、公式サイトに「Re-start」というキャッチフレーズが印象的な、歌手としての茅原実里再始動を予告する告知が掲示されていたように思います。明けて2007年1月、ランティスから「純白サンクチュアリィ」が発売され、歌手・茅原実里の第二期がスタートします。売り上げにすると、

純白サンクチュアリィ 6746枚 35位 4回 2007/1/24(シングル)
君がくれたあの日   9727枚 20位 4回 2007/6/7(シングル)
Contact       22881枚 11位 5回 2007/10/24(アルバム)
(参考:声優CD売上データベース)

 と繋がります。通常、シングルとアルバムの売り上げを併記するのはデータとしての正確性を欠くことが多いのですが、茅原実里さんの場合は2007年中、ラジオ媒体などで「純白サンクチュアリィ」を代表とするシングル曲がかなりヘビーローテーションされており、大きな知名度を持っていました。「Contact」の大ヒットは、そうした楽曲に興味を持っていた層が、ベストアルバムを買う感覚で購入した面が大きいと思いますので、この3枚の売り上げは1本の線上に置いてもいいように思います。

 そして、順調にファン層を拡大している茅原さんの人気を考える上で、見落としがちなのが2006年のハルヒ以前、必ずしも声優ファンからの風向きが優しくなかった時代の茅原さんの存在ではないか、てのが今回の主旨になります。この時代の茅原さんに対するファンの対応は必ずしも芳しくありませんでしたが、当時のアンテナの立ったファンなら、「バッシングも多いけど、この人はいい子だし頑張ってるなぁ」という印象を持っていたのではないでしょうか。そして、そうした(相対的に)不遇な時期に、腐らずに継続して頑張っていたという事実は、その個人が持つ「物語」に厚みや深みを与えるものだと思うのです。2005年に「ずっと...一緒/負けない」をリリースしてから2年間、茅原さんに個人名義でのCDのリリースはありません。歌が大好きなんだけど、個人として歌う場が与えられない。だったら、路上で歌おう。茅原さんの秋葉原での路上ライブは、『涼宮ハルヒの憂鬱』の放送が始まる2006年4月まで続きました。こうした、「必ずしも結果には繋がっていないけど、頑張り続けた日々」というのを踏まえたうえで、

発売前夜
純白サンクチュアリィ

 あたりの、純白サンクチュアリィ発売前後の茅原さんの日記とかを見ると、何かゆさぶられるものがありませんか。不遇な時代があるからこそ、支えているファンからすると、「Contact」の大ヒットで「やっと彼女の頑張りが報われた」という種の喜び、カタルシスは大きいのではないでしょうか。ライトなファンを広げるのとは別のベクトルで、「強固で忠誠度の高いファンを掴む」という方向性では、このファンとの間での「物語と時間の蓄積の共有」が、物を言う気がします。わかりやすく言い換えれば、「自分が応援するうちに、一緒に育って大きくなった感」ですね。以前アイドルマスターについても近いことを書きましたが、この、対象と一緒に苦労を重ねた時期というのは、ブレイク後の演者とファンの繋がりにおいて、宝になるのではないでしょうか。

 ここで前項の“平野綾ブーム”に話を戻したいと思うのですが、平野さんにとって幸運であると同時に、逆説的にハンデになりうるのが、そのブレイクが、あまりにスムーズだったことではないかと思うのです。「冒険でしょでしょ?」と「ハレ晴れユカイ」を引っさげて平野綾さんが登場したとき、平野さんは僕らにとって既に“あの涼宮ハルヒの平野綾”でした。いわば、僕らの目の前に登場したときと、ブレイクした時期がほぼ同時期なんですね。その「頂点に向けて上り詰める過程」をファンが目にしていない状態で、売り上げ10万枚突破、といった形がババンと表れ、そこに周辺企業や一般メディアが眼をつけ……といったサイクルに突入したため、「自分たちファン(だけ)が関与し、支えた時期」が極端に短いことが、その流れに乗り切れない状況を生み出しているのかな、と思うのです。

 もちろん、平野綾さんが苦労していない、というつもりは毛頭ありません。僕はたまたまですが、2002年ごろに「深夜戦隊ガリンペロ」という深夜番組で、平野綾さんがSpringsの一員として「涙にバイニー」を歌っているのをよく眼にしていましたし、『キディ・グレイド』も見ていました。しかし、多くのファンの中で、「涼宮ハルヒ以前」と「以後」の平野綾さんは、認識の上でかなり断絶しているような気がします。30近い僕の周辺でもそうですから、若いファンからすれば、涼宮ハルヒ以前の平野さんは、ほとんど意識に上らないものでしょう。

 苦労という意味では、体調を崩すほどの極端な多忙は、まだ10代の女性にとってかなりの負担であったことは想像に固くありません。しかし難しいのは、「仕事が多く、忙しすぎて自分の時間もない」というのは、本質的にファンにとっては共感しにくい苦労なのです。なぜなら、ファンなら応援する相手に無理はしてほしくないと思いながらも、たくさんの番組で好きな声優の声がきけたり、色々な歌が聞ける……というのは、ファンにとっては「嬉しい」ことだからです。アーティストの「つらい・大変」がファンの「嬉しい」になってしまうのは皮肉なことです(だからこそ、演者の側も頑張れる、という面はあると思いますが)。一方、歌いたいけど歌えない、すごくいい芝居をするのに役に恵まれない……といった苦労は、ファンの側も「もっと活躍してほしい」というベクトルで共感できるので、物語と思い入れの蓄積の上ではよりプラスなんですね。

 もちろん、早い段階でブレイクしたというのは、間違いなく大きな武器です。「若さ」の持つ力というのは、スペースクラフトのような芸能系(+劇団若草のような子役に強い劇団系)が持つ大きなアドバンテージです。芸能を志す多くの人にとっては、うらやましすぎる贅沢な悩みといえるでしょう。しかし、最初からトップランナーというのは、間違いなく、その人にしかわからない難しさ、つらさがあると思います。ちょっと売り上げが落ちると、すぐに落ち目だなんだと騒ぐ人がでるでしょうしね。平野さんにとっていいお手本になるのは、声優界ではやはり水樹奈々さんだと思います。僕の見方では、水樹さんは「あまり物語を必要としない」タイプの声優系歌手です。純粋に楽曲とライブパフォーマンスの圧倒的な説得力で見るもの・聞くものをねじ伏せるスタイルは、よりメジャーな世界を志向する上では間違いなく一番の近道だと思います。もちろん、その域に達するために必要な努力と才能は、並大抵なものではないと思いますが。

おまけ そういう「物語を背負った声優」という立ち位置で考えると、数年以内に明坂聡美さんあたりが平野綾さんを脅かすライバルストーリーというのは成立しうると個人的には。現状では妄想の範囲を出ませんけれど。
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2007/12/10 15:10 | Comments(2) | TrackBack() | 雑記(アニメ系)

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コメント

体調崩したのは、綾ちゃんやみのりんを含めランティス所属声優が多かった1年だったと思います。

奈々ちゃんは演歌・童謡の物語性が、みのりんは尾崎豊やフォ-クなどを感じることができますし、それらは僕の中の許容範囲です。綾ちゃんからヘビメタに近いものを感じることができ、楽曲やパフォ-マンスで圧倒させたいのは綾ちゃんの方ではと思います。単に僕が洋楽をあまり知らないのもありますが、アニメ&声優ソングの枠を超えすぎているのではないかと考えてしまいます。アニサマ2007が全てを表してます。




posted by yui at 2007/12/12 22:28 [ コメントを修正する ]
>yuiさん
水樹さん・茅原さんは、ターゲットとする層がばしっと決まってるから、安心して聞ける部分があるのかもしれませんね。
確かに平野さんの方向性は、声優・アニソンの範囲を向いていない気がするのですが、果たしてそれが「一般人を向いているから」なのか「平野綾の目指す音楽に忠実だから」なのかが、掴みきれていません。

後者なら、継続していれば、それを好むファン層が定まってくるはずです。前者なら、それに必要な突破力を備えられるかの勝負になってくると思います。
posted by なかざと at 2007/12/13 11:56 [ コメントを修正する ]

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