痛いニュースさんで以下のような面白い記事が上がっていました。
素人格闘技大会開催決定 “ストリートファイト東京No.1”や“2ちゃんねらー”も参戦!
「THE OUTSIDER(アウトサイダー)」という大会は、元プロレスラーの前田日明氏が立ち上げた大会で、「不良たちや、在野のまだ見ぬ素材を集めて大会を行ない、格闘技界の底辺を拡大する」というコンセプトでした。その響きから僕らは、『グラップラー刃牙』の柴千春のような腕自慢たちが、北関東などから押し寄せ、素人のリアルファイトを見せてくれるのだと思っていました。ところが、実際集まった面々を見ると、人相は悪い人が多いものの、「総合格闘技○年」「アマレス○年」「柔道○年」「ブラジリアン柔術紫帯」といった、プロのリングや、アマ修斗(元初代タイガーマスクが立ち上げたハイレベルな総合格闘技のアマチュア部門)の上のほうでやるにはちと物足りない経験者がゴロゴロいる、ごく普通の総合格闘技の登竜門的空気が漂ってきてしまいました。
しかし、募集の仕方が仕方だっただけに、中には凄玉がいます。瓜田“現在20代後半の世代のアウトロー界のカリスマであり、路上の喧嘩、および関東広域での武勇伝、エピソードは数知れない。路上の喧嘩で現在活躍中の有名格闘家達をKOした、土下座させた…など数々の逸話を持っている@wikipedia”純士さんや、原田“2ちゃんねる格闘技板素人代表”桃丸さん、加藤“夜櫻会三代目総長”友弥さんなどです。彼ら路上のレジェンドたちと、人相の悪い格闘アスリートたちがリングで激突する……そう、これはリアル『ホーリーランド』として見るのが正しい大会だと思います。『バキ』や『ホーリーランド』が好きな人にはぜひ注目してもらいたいので、初心者向けの「THE OUTSIDER」、そして総合格闘技の見方入門を書いて見たいと思います。
●寝技>>立ち技の競技性
2008年現在の総合格闘技は、立ち技だけでも、寝技だけでも勝つことは難しくなっています。何らかのバックボーンを持った上で、スタンド(立ち技)にもグラウンド(寝技)にも対応できる、総合格闘家同士の戦いがほとんどなんですね。ですから、現在の洗練された総合格闘技は、必ずしも「OUTSIDER」の完璧な教科書にはなりません。「柔道家対空手家」のような、異種格闘技によるガチンコのサンプルとしては、1993年当時の米国UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)が適当だと思います。UFCは現在の総合格闘技の礎となった大会ですが、第1回当時は、得体の知れない有名無名の格闘家たちを金網に閉じ込め、1対1でガチンコをさせるバイオレンス性の高い大会でした。カラテ・ジュードー・スモウ・ニンジャなどが金網で戦う、リアルストIIというべき大会だったのです。第1回は体重制限なしのワンデイトーナメントだったのですが、優勝したのは小兵のホイス・グレイシー。当時、ブラジル国外では誰も知らなかったグレイシー柔術の使い手がUFCを制し、「兄のヒクソンは私の10倍強い」と発言したことから、グレイシー幻想はスタートしたのです。
では、なぜホイスは軽量のハンデを乗り越えて、優勝することができたのでしょうか。1つは、総合格闘技の原型となった「バーリトゥード(VT)」はブラジルで開催されており、グレイシーは「バーリトゥードで勝つことを修練した」柔術家の集団だったからです。町道場の腕自慢の中に、競技を知り尽くし、予習を重ねてきたプロが一人混ざっていたと言ってもいいでしょう。それから大きな要素として、寝技と立ち技の関係性があります。こと、総合格闘技において、「寝技しかできない」人間と「立ち技しかできない」人間が戦えば、基本的に寝技使いが優位です。それはそれぞれのフィールドで、できることを考えればわかりやすくなります。
スタンドで向かい合っている場合、打撃系選手は優位です。一方、寝技系の選手は、タックルで倒したり、引き込んだりといった手管で、相手を自分のフィールドに引きずりこむ選択肢があります。
グラウンドでの攻防になった場合、当然寝技系選手が優位です。一方、立ち技系の選手は、もがいてラッキーな脱出を狙うしかありません。
寝技系選手は、「スタンド→グラウンド」へと持ち込むための投げ・タックル・引き込みといった技術体系を持っているのに対し、立ち技系の選手は、「グラウンド→スタンド」への移行は、基本、ルールの助けを借りるしかありません。寝技系の選手は、一度寝かせた素人を立たせてはくれませんから。さらに立ち技の選手は、目潰し・金的・肘打ち・脊髄への攻撃といった、極めて効果的なオプションの幾つかをルールによって封じられています。もちろん、それは安全面を考えれば当然なのですが、極真空手をバックボーンにリングスなどにも上がった喧嘩屋ジェラルド・コルドーは、執拗な目潰しでホイスの寝技に対抗しました。そのゴルドーは95年の国内バーリトゥード大会で、中井祐樹選手の右目をサミングで失明させ、事実上リングを追われることになるのですが……。
●倒す技術・倒されない技術
打撃選手は立っている間に倒すしかなく、タックルに入ってくる選手に対しては、出会い頭で潰せなければ勝利は難しい。こうした打撃系<<寝技系という初期VTの流れは、必然的にひとつの潮流を生みました。それは、「倒す技術」をもった選手の台頭です。先ほど、「寝技に入ったら、グラウンド選手は素人を逃がさない」と書きました。しかし、ヴァーリトゥードには、「相手に馬乗りになって、相手をたこ殴りにする(そして相手が後ろを向いてしまったところを絞め技で仕留める)」という「打のフィニッシュ」も存在しました。グラウンドで相手を極めること、そしてグラウンドで馬乗りになって殴ること。そのフィニッシュに共通しているのは、「相手を倒してグラウンドに持ち込み、自分にとって有利な体制をとる」という過程です。そのため、やがてヴァーリ・トゥードでは「相手を倒す技術」が重視されるようになったのです。
ここにきて、ブラジリアン柔術に強力なライバルが現れました。それが、アマレス選手たちです。アメリカではアマレスは花形スポーツであり、分厚い選手層に支えられたスポーツエリートの宝庫です。そして彼らは、「組みついて、倒し、相手を制圧する」技術にかけてはスペシャリストでした。もちろん、アマレスラーたちに、関節技を極めるテクニックはありません。しかし、完全にポジショニングを制してしまえば、付け焼刃のパンチを上からゴツン、ゴツンと落としているだけで、相手は壊せます。なんせかれらは100キロの筋肉の塊なのです。「倒す、上になる、殴る」。この、シンプルな方程式は、一時期VT界を席巻しました。
しかし面白いもので、選手たちは環境にあわせて変化します。アマレスラーの進化に追随するように、今度は打撃系選手・ストライカーもまた、別系統の進化を始めたのです。それは、「タックルで倒されない技術」の習得です。千変万化の寝技の攻防や、相手の上を取るポジショニングなどは、長い修練を重ねる必要があります。しかし、ストライカーの中に、コロンブスの卵的発想が生まれたのです。「倒したり、極めたりする技術は必要ない。なぜなら俺たちはスタンドで殴って倒せるから」という。彼らは、タックルを“切る”技術を集中して習得しました。重心を低く保ち、下半身を後ろに滑らせながら、がぶるようにしてこらえるような技術ですね。また、タックルに入ってくる相手に、カウンターで膝を合わせる技術も発達しました。こうした、「倒しに来る相手への対処法を身につけたストライカー」の完成形のひとつが、ミルコ・クロコップ選手です。このように、「倒されない技術を持ったストライカー」「グラウンドでパンチを手に入れたアマレスラー」「総合的な技術を身につけた柔術系選手」などが入り乱れているのが今の総合格闘技です。
ですから、選手のバックボーンを見て、その選手の得意とするスタイルを想像できるようになると、こうした未知の選手同士の観戦も面白くなります。アマレス選手と空手家が戦うときは、アマレス選手がタックルで倒して陵辱するか、倒される前に、空手家が打撃で叩き潰すかが見所になるわけです。同じ倒すムーブでもアマレスの「タックルで倒す動き」、柔道の「投げ、崩す動き」、ブラジリアン柔術の「引き込み、下から極める動き」など色々な違いがあるので、そこも見所です。ですから、「総合格闘家」という肩書きだけの人たちは正直面白みがないのですが……ま、そういう時は「格闘家対不良」といった視点を探すと楽しみやすいと思います。
●前田日明の見方
さて、「THE OUTSIDER」を見る上でもうひとつ欠かせないのが、プロデューサーである前田日明というおっさんの存在です。このおっさんを知っているかどうかで、「THE OUTSIDER」という大会のコク深さが変わってきます。ただ、ここで前田日明論をぶちはじめると日が暮れてしまうので、前田日明エピソードの数々を列挙するので、どういうおっさんが、においをよみとってもらえたらと思います。
・在日韓国人三世として生を受ける。(後に帰化、日本刀と零戦をこよなく愛するコテコテの右寄りのおっさんに)
・「肉が食えるから」という理由で新日本プロレスに
・より格闘技性を追求した「UWF」に参加するが、佐山聡ら他主要メンバーと決裂して解散。後に新日本プロレスにユーターン
・223cmの巨漢レスラー、アンドレ・ザ・ジャイアントに制裁ガチンコ試合を仕掛けられるが、前田戸惑いながらもアンドレの膝をズタズタに破壊、アンドレは試合放棄、試合映像はお蔵入りに
・長州力に背後からガチ蹴りを入れ、顔面を骨折させる。世に言う「長州顔面蹴撃事件」により、新日本プロレスを解雇される
・第2次UWF立ち上げに参加するが、フロントともめまくって解散
・リングスを立ち上げ、リングスネットワークのロシア・グルジアなどから、過去・現在の格闘技界を背負う多くの格闘家を発掘する
・ライバル団体・パンクラスの社長の胸倉を掴んで訴えられる
・批判的な記事を書いた雑誌編集長を、女子トイレに監禁した
・ライバル団体・UWFインターの安生に背後から殴られて失神した
・アメリカでスタッフの女性とトラブル、殴打して逮捕された
・「K-1 PREMIUM 2007 Dynamite!!」にプレゼンターとして登場するが、何を思ったのか田村潔司にトロフィーを投げつける
・あ、忘れてたけど、現役最後の試合では、1987年から2000年まで国際試合不敗を誇ったグレコローマン・レスリング“人類最強の男”アレクサンドル・カレリンと対戦。内容はともかく、カレリンを引っ張り出した前田の政治力は非凡。ちなみにカレリンは、『グラップラー刃牙』のアレクサンダー・ガーレンのモデル
こんなおっさんが「不良少年に夢とチャンスを」とか言って大会を企画しているのですから、これはもうお好きな人にはたまらないと言えるでしょう。参加アウトサイダーズの誰かが、解説席の前田に手を出したりしないかな、そして前田が殴りつけて新聞沙汰にならないかな……そんな楽しみ方もできるのが「THE OUTSIDER」なのです。
素人格闘技大会開催決定 “ストリートファイト東京No.1”や“2ちゃんねらー”も参戦!
「THE OUTSIDER(アウトサイダー)」という大会は、元プロレスラーの前田日明氏が立ち上げた大会で、「不良たちや、在野のまだ見ぬ素材を集めて大会を行ない、格闘技界の底辺を拡大する」というコンセプトでした。その響きから僕らは、『グラップラー刃牙』の柴千春のような腕自慢たちが、北関東などから押し寄せ、素人のリアルファイトを見せてくれるのだと思っていました。ところが、実際集まった面々を見ると、人相は悪い人が多いものの、「総合格闘技○年」「アマレス○年」「柔道○年」「ブラジリアン柔術紫帯」といった、プロのリングや、アマ修斗(元初代タイガーマスクが立ち上げたハイレベルな総合格闘技のアマチュア部門)の上のほうでやるにはちと物足りない経験者がゴロゴロいる、ごく普通の総合格闘技の登竜門的空気が漂ってきてしまいました。
しかし、募集の仕方が仕方だっただけに、中には凄玉がいます。瓜田“現在20代後半の世代のアウトロー界のカリスマであり、路上の喧嘩、および関東広域での武勇伝、エピソードは数知れない。路上の喧嘩で現在活躍中の有名格闘家達をKOした、土下座させた…など数々の逸話を持っている@wikipedia”純士さんや、原田“2ちゃんねる格闘技板素人代表”桃丸さん、加藤“夜櫻会三代目総長”友弥さんなどです。彼ら路上のレジェンドたちと、人相の悪い格闘アスリートたちがリングで激突する……そう、これはリアル『ホーリーランド』として見るのが正しい大会だと思います。『バキ』や『ホーリーランド』が好きな人にはぜひ注目してもらいたいので、初心者向けの「THE OUTSIDER」、そして総合格闘技の見方入門を書いて見たいと思います。
●寝技>>立ち技の競技性
2008年現在の総合格闘技は、立ち技だけでも、寝技だけでも勝つことは難しくなっています。何らかのバックボーンを持った上で、スタンド(立ち技)にもグラウンド(寝技)にも対応できる、総合格闘家同士の戦いがほとんどなんですね。ですから、現在の洗練された総合格闘技は、必ずしも「OUTSIDER」の完璧な教科書にはなりません。「柔道家対空手家」のような、異種格闘技によるガチンコのサンプルとしては、1993年当時の米国UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)が適当だと思います。UFCは現在の総合格闘技の礎となった大会ですが、第1回当時は、得体の知れない有名無名の格闘家たちを金網に閉じ込め、1対1でガチンコをさせるバイオレンス性の高い大会でした。カラテ・ジュードー・スモウ・ニンジャなどが金網で戦う、リアルストIIというべき大会だったのです。第1回は体重制限なしのワンデイトーナメントだったのですが、優勝したのは小兵のホイス・グレイシー。当時、ブラジル国外では誰も知らなかったグレイシー柔術の使い手がUFCを制し、「兄のヒクソンは私の10倍強い」と発言したことから、グレイシー幻想はスタートしたのです。
では、なぜホイスは軽量のハンデを乗り越えて、優勝することができたのでしょうか。1つは、総合格闘技の原型となった「バーリトゥード(VT)」はブラジルで開催されており、グレイシーは「バーリトゥードで勝つことを修練した」柔術家の集団だったからです。町道場の腕自慢の中に、競技を知り尽くし、予習を重ねてきたプロが一人混ざっていたと言ってもいいでしょう。それから大きな要素として、寝技と立ち技の関係性があります。こと、総合格闘技において、「寝技しかできない」人間と「立ち技しかできない」人間が戦えば、基本的に寝技使いが優位です。それはそれぞれのフィールドで、できることを考えればわかりやすくなります。
スタンドで向かい合っている場合、打撃系選手は優位です。一方、寝技系の選手は、タックルで倒したり、引き込んだりといった手管で、相手を自分のフィールドに引きずりこむ選択肢があります。
グラウンドでの攻防になった場合、当然寝技系選手が優位です。一方、立ち技系の選手は、もがいてラッキーな脱出を狙うしかありません。
寝技系選手は、「スタンド→グラウンド」へと持ち込むための投げ・タックル・引き込みといった技術体系を持っているのに対し、立ち技系の選手は、「グラウンド→スタンド」への移行は、基本、ルールの助けを借りるしかありません。寝技系の選手は、一度寝かせた素人を立たせてはくれませんから。さらに立ち技の選手は、目潰し・金的・肘打ち・脊髄への攻撃といった、極めて効果的なオプションの幾つかをルールによって封じられています。もちろん、それは安全面を考えれば当然なのですが、極真空手をバックボーンにリングスなどにも上がった喧嘩屋ジェラルド・コルドーは、執拗な目潰しでホイスの寝技に対抗しました。そのゴルドーは95年の国内バーリトゥード大会で、中井祐樹選手の右目をサミングで失明させ、事実上リングを追われることになるのですが……。
●倒す技術・倒されない技術
打撃選手は立っている間に倒すしかなく、タックルに入ってくる選手に対しては、出会い頭で潰せなければ勝利は難しい。こうした打撃系<<寝技系という初期VTの流れは、必然的にひとつの潮流を生みました。それは、「倒す技術」をもった選手の台頭です。先ほど、「寝技に入ったら、グラウンド選手は素人を逃がさない」と書きました。しかし、ヴァーリトゥードには、「相手に馬乗りになって、相手をたこ殴りにする(そして相手が後ろを向いてしまったところを絞め技で仕留める)」という「打のフィニッシュ」も存在しました。グラウンドで相手を極めること、そしてグラウンドで馬乗りになって殴ること。そのフィニッシュに共通しているのは、「相手を倒してグラウンドに持ち込み、自分にとって有利な体制をとる」という過程です。そのため、やがてヴァーリ・トゥードでは「相手を倒す技術」が重視されるようになったのです。
ここにきて、ブラジリアン柔術に強力なライバルが現れました。それが、アマレス選手たちです。アメリカではアマレスは花形スポーツであり、分厚い選手層に支えられたスポーツエリートの宝庫です。そして彼らは、「組みついて、倒し、相手を制圧する」技術にかけてはスペシャリストでした。もちろん、アマレスラーたちに、関節技を極めるテクニックはありません。しかし、完全にポジショニングを制してしまえば、付け焼刃のパンチを上からゴツン、ゴツンと落としているだけで、相手は壊せます。なんせかれらは100キロの筋肉の塊なのです。「倒す、上になる、殴る」。この、シンプルな方程式は、一時期VT界を席巻しました。
しかし面白いもので、選手たちは環境にあわせて変化します。アマレスラーの進化に追随するように、今度は打撃系選手・ストライカーもまた、別系統の進化を始めたのです。それは、「タックルで倒されない技術」の習得です。千変万化の寝技の攻防や、相手の上を取るポジショニングなどは、長い修練を重ねる必要があります。しかし、ストライカーの中に、コロンブスの卵的発想が生まれたのです。「倒したり、極めたりする技術は必要ない。なぜなら俺たちはスタンドで殴って倒せるから」という。彼らは、タックルを“切る”技術を集中して習得しました。重心を低く保ち、下半身を後ろに滑らせながら、がぶるようにしてこらえるような技術ですね。また、タックルに入ってくる相手に、カウンターで膝を合わせる技術も発達しました。こうした、「倒しに来る相手への対処法を身につけたストライカー」の完成形のひとつが、ミルコ・クロコップ選手です。このように、「倒されない技術を持ったストライカー」「グラウンドでパンチを手に入れたアマレスラー」「総合的な技術を身につけた柔術系選手」などが入り乱れているのが今の総合格闘技です。
ですから、選手のバックボーンを見て、その選手の得意とするスタイルを想像できるようになると、こうした未知の選手同士の観戦も面白くなります。アマレス選手と空手家が戦うときは、アマレス選手がタックルで倒して陵辱するか、倒される前に、空手家が打撃で叩き潰すかが見所になるわけです。同じ倒すムーブでもアマレスの「タックルで倒す動き」、柔道の「投げ、崩す動き」、ブラジリアン柔術の「引き込み、下から極める動き」など色々な違いがあるので、そこも見所です。ですから、「総合格闘家」という肩書きだけの人たちは正直面白みがないのですが……ま、そういう時は「格闘家対不良」といった視点を探すと楽しみやすいと思います。
●前田日明の見方
さて、「THE OUTSIDER」を見る上でもうひとつ欠かせないのが、プロデューサーである前田日明というおっさんの存在です。このおっさんを知っているかどうかで、「THE OUTSIDER」という大会のコク深さが変わってきます。ただ、ここで前田日明論をぶちはじめると日が暮れてしまうので、前田日明エピソードの数々を列挙するので、どういうおっさんが、においをよみとってもらえたらと思います。
・在日韓国人三世として生を受ける。(後に帰化、日本刀と零戦をこよなく愛するコテコテの右寄りのおっさんに)
・「肉が食えるから」という理由で新日本プロレスに
・より格闘技性を追求した「UWF」に参加するが、佐山聡ら他主要メンバーと決裂して解散。後に新日本プロレスにユーターン
・223cmの巨漢レスラー、アンドレ・ザ・ジャイアントに制裁ガチンコ試合を仕掛けられるが、前田戸惑いながらもアンドレの膝をズタズタに破壊、アンドレは試合放棄、試合映像はお蔵入りに
・長州力に背後からガチ蹴りを入れ、顔面を骨折させる。世に言う「長州顔面蹴撃事件」により、新日本プロレスを解雇される
・第2次UWF立ち上げに参加するが、フロントともめまくって解散
・リングスを立ち上げ、リングスネットワークのロシア・グルジアなどから、過去・現在の格闘技界を背負う多くの格闘家を発掘する
・ライバル団体・パンクラスの社長の胸倉を掴んで訴えられる
・批判的な記事を書いた雑誌編集長を、女子トイレに監禁した
・ライバル団体・UWFインターの安生に背後から殴られて失神した
・アメリカでスタッフの女性とトラブル、殴打して逮捕された
・「K-1 PREMIUM 2007 Dynamite!!」にプレゼンターとして登場するが、何を思ったのか田村潔司にトロフィーを投げつける
・あ、忘れてたけど、現役最後の試合では、1987年から2000年まで国際試合不敗を誇ったグレコローマン・レスリング“人類最強の男”アレクサンドル・カレリンと対戦。内容はともかく、カレリンを引っ張り出した前田の政治力は非凡。ちなみにカレリンは、『グラップラー刃牙』のアレクサンダー・ガーレンのモデル
こんなおっさんが「不良少年に夢とチャンスを」とか言って大会を企画しているのですから、これはもうお好きな人にはたまらないと言えるでしょう。参加アウトサイダーズの誰かが、解説席の前田に手を出したりしないかな、そして前田が殴りつけて新聞沙汰にならないかな……そんな楽しみ方もできるのが「THE OUTSIDER」なのです。
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