私家版・アニラジ史考察(1)(1980年代)
私家版・アニラジ史考察(2)(1990年代前中期)
私家版・アニラジ史考察(3)(1990年代末~)の続きです。
ここからは現在をテーマに扱うことになるので、時系列表記をやめ、印象的なトピックを散文的に並べます。
●webラジオ全盛時代(2005年~)
21世紀に入り、かつて地上波ラジオで放送していた番組が、webに舞台を移して放送を継続するケースが増えてきました。しかし、本当の意味でweb系のアニラジが定着したのは、「インターネットラジオステーション・音泉」「animate.tv」のツートップがポータルとして機能し始めた2005年~2006年頃でしょう。2004年4月に音泉サイトがオープン。キャラクターショーや東京ゲームショーなどでひっそりと設置されていた音泉ブースでしたが、当時の僕は完全スルーでした。が、当時から「川上とも子のうさぎのみみたぶ」「名塚佳織のかもさん學園」「かかずゆみの超輝け!大和魂!!」などの今も続く人気番組は配信されていました。そんな音泉にとって、最初のブレイクスルーは2004年6月に放送をスタートした「カレイドスター そらとレイラの すごい ○○」。地上波系の一人ラジオがメインだった音泉に舞い降りた救世主が、アニメ『カレイドスター』の大原さやかさん、広橋涼さんによるこのラジオでした。女性声優による掛け合いを軸に、企画コーナーへのリスナーメールから広げていく現在のwebラジオの基本フォーマットは、この番組で作られたといっても過言ではありません。もちろん番組構成は地上波でもよくあった形ですが、「フリートークが盛り上がればどんどん続けていい、盛り上がれば放送時間が延びたってかまわない」という、いい意味でのだらしなさが大きな武器と言えるでしょう。アニメの本放送が終わっているにもかかわらず2年以上も続いたことが、何よりもこの番組の人気のほどを示しています。
●声優の人間関係が、そのまま番組になる
webラジオが反映し、番組数が激増した結果、リソースの分散が起こりました。人気声優の数やスケジュールには限りがあり、構成作家の数にも限りがあります。その結果、判を押したようなコーナー・構成の類似番組が増え、ひとつの番組に投入できる時間・予算にも限りがあるようになりました。そうなると、いわゆるAMラジオ的な番組作りは難しくなります。そこでwebラジオが向かったのが、「複数の声優を共演させ、その化学反応を期待する」という方向です。いわゆる「声優百合」的な視点が生まれたこともあり、アニラジは「かわいい女性声優がきゃっきゃうふふしてるのを観客として眺める」ニュアンスが強くなっているように感じます。台本ではない素のトークの面白さ、人間関係の広さなどが人気に換算されるようになり、より人気声優に求められる要素は増えたといえるでしょう。
こうした、人間関係の化学反応の究極形、webラジオのひとつの到達点と言えるのが、2006年7月に放送を開始した「うたわれるものラジオ」と言えるでしょう。ハクオロ役・小山力也を主人公としたギャルゲーがリアルに展開され、擬似?恋愛の修羅場が全世界に配信されるという前代未聞の展開に、音泉のサーバーが落とされる空前のヒットとなったのでした。メインの2人の関係はもちろん、「二次元が初恋じゃ駄目ですか!」などの数々の名言を生み出した出演者たち、突然にわれわれの前に現れたヒゲ独身というボスキャラ、演劇論を語るみゆきち、UMAの発見……などなど、数え上げればキリがない奇跡のような番組でした。うたラジを見てもわかる通り、「個々のパーソナリティ」ではなく、「一緒に番組をやる複数の人間の相性・かみ合わせ」が番組の核になるというのが、現在のアニラジの主流だと思います。
●見直されるおっさん価値
しかし、生天目仁美さんや伊藤静さん、能登麻美子さんなどを中心として繰り広げられる女性声優交友地図がアニラジ界で大きな存在感を持つ一方、改めて見直されているのが、番組やイベントを回せる男性パーソナリティの存在です。番組が激増し、さらに女性声優のサイクルが早くなると、なかなか安定した番組供給は難しくなります。そんな時代だからこそ、安定感のある男性パーソナリティに一定の需要があるのは、面白い状況ですね。やまけんさん、鷲崎健さん、はりけーんず前田さん、スパイシーさんなどのおっさんたちに加え、小野坂昌也さんも別格といってもいい人気をキープしています。
と、こんな感じで、アニラジの歴史を振り返ってみました。webラジオに関しては、今後しばらくしたら、淘汰の時代が始まる気がします。我も我もと新規参入が続き、パイの取り合いが起こっています……が、後発参入企業はどこも、「ラジオって基本的に儲かるもんでもないなぁ」という当たり前の事実に気がついている頃だと思います。「DJCD」はアニラジ史上に残る発明だと思いますが、基本的に対価の回収手段に乏しいのがwebラジオ。今後も経営が安泰なのは、最強の物販力を持つアニメイトTVと、宣伝がCD売り上げに直結するランティスぐらいだと思います。音泉さんがどこで収益の帳尻を合わせるビジネスモデルなのか、ちょっと気になります。コスパの売り上げが番組効果ですごく伸びてるとも思えないんですが^^;
地上波AMには、女性ファンを確保しようとする流れも感じられます。第一世代の人気番組もまだまだ元気です。文化放送は、懲りずに色々と新メディアに手を出しているようです。アニラジ界がどこへ向かっていくのかはわかりませんが、今後も面白い番組に出会えるといいな、と思います。
私家版・アニラジ史考察(2)(1990年代前中期)
私家版・アニラジ史考察(3)(1990年代末~)の続きです。
ここからは現在をテーマに扱うことになるので、時系列表記をやめ、印象的なトピックを散文的に並べます。
●webラジオ全盛時代(2005年~)
21世紀に入り、かつて地上波ラジオで放送していた番組が、webに舞台を移して放送を継続するケースが増えてきました。しかし、本当の意味でweb系のアニラジが定着したのは、「インターネットラジオステーション・音泉」「animate.tv」のツートップがポータルとして機能し始めた2005年~2006年頃でしょう。2004年4月に音泉サイトがオープン。キャラクターショーや東京ゲームショーなどでひっそりと設置されていた音泉ブースでしたが、当時の僕は完全スルーでした。が、当時から「川上とも子のうさぎのみみたぶ」「名塚佳織のかもさん學園」「かかずゆみの超輝け!大和魂!!」などの今も続く人気番組は配信されていました。そんな音泉にとって、最初のブレイクスルーは2004年6月に放送をスタートした「カレイドスター そらとレイラの すごい ○○」。地上波系の一人ラジオがメインだった音泉に舞い降りた救世主が、アニメ『カレイドスター』の大原さやかさん、広橋涼さんによるこのラジオでした。女性声優による掛け合いを軸に、企画コーナーへのリスナーメールから広げていく現在のwebラジオの基本フォーマットは、この番組で作られたといっても過言ではありません。もちろん番組構成は地上波でもよくあった形ですが、「フリートークが盛り上がればどんどん続けていい、盛り上がれば放送時間が延びたってかまわない」という、いい意味でのだらしなさが大きな武器と言えるでしょう。アニメの本放送が終わっているにもかかわらず2年以上も続いたことが、何よりもこの番組の人気のほどを示しています。
●声優の人間関係が、そのまま番組になる
webラジオが反映し、番組数が激増した結果、リソースの分散が起こりました。人気声優の数やスケジュールには限りがあり、構成作家の数にも限りがあります。その結果、判を押したようなコーナー・構成の類似番組が増え、ひとつの番組に投入できる時間・予算にも限りがあるようになりました。そうなると、いわゆるAMラジオ的な番組作りは難しくなります。そこでwebラジオが向かったのが、「複数の声優を共演させ、その化学反応を期待する」という方向です。いわゆる「声優百合」的な視点が生まれたこともあり、アニラジは「かわいい女性声優がきゃっきゃうふふしてるのを観客として眺める」ニュアンスが強くなっているように感じます。台本ではない素のトークの面白さ、人間関係の広さなどが人気に換算されるようになり、より人気声優に求められる要素は増えたといえるでしょう。
こうした、人間関係の化学反応の究極形、webラジオのひとつの到達点と言えるのが、2006年7月に放送を開始した「うたわれるものラジオ」と言えるでしょう。ハクオロ役・小山力也を主人公としたギャルゲーがリアルに展開され、擬似?恋愛の修羅場が全世界に配信されるという前代未聞の展開に、音泉のサーバーが落とされる空前のヒットとなったのでした。メインの2人の関係はもちろん、「二次元が初恋じゃ駄目ですか!」などの数々の名言を生み出した出演者たち、突然にわれわれの前に現れたヒゲ独身というボスキャラ、演劇論を語るみゆきち、UMAの発見……などなど、数え上げればキリがない奇跡のような番組でした。うたラジを見てもわかる通り、「個々のパーソナリティ」ではなく、「一緒に番組をやる複数の人間の相性・かみ合わせ」が番組の核になるというのが、現在のアニラジの主流だと思います。
●見直されるおっさん価値
しかし、生天目仁美さんや伊藤静さん、能登麻美子さんなどを中心として繰り広げられる女性声優交友地図がアニラジ界で大きな存在感を持つ一方、改めて見直されているのが、番組やイベントを回せる男性パーソナリティの存在です。番組が激増し、さらに女性声優のサイクルが早くなると、なかなか安定した番組供給は難しくなります。そんな時代だからこそ、安定感のある男性パーソナリティに一定の需要があるのは、面白い状況ですね。やまけんさん、鷲崎健さん、はりけーんず前田さん、スパイシーさんなどのおっさんたちに加え、小野坂昌也さんも別格といってもいい人気をキープしています。
と、こんな感じで、アニラジの歴史を振り返ってみました。webラジオに関しては、今後しばらくしたら、淘汰の時代が始まる気がします。我も我もと新規参入が続き、パイの取り合いが起こっています……が、後発参入企業はどこも、「ラジオって基本的に儲かるもんでもないなぁ」という当たり前の事実に気がついている頃だと思います。「DJCD」はアニラジ史上に残る発明だと思いますが、基本的に対価の回収手段に乏しいのがwebラジオ。今後も経営が安泰なのは、最強の物販力を持つアニメイトTVと、宣伝がCD売り上げに直結するランティスぐらいだと思います。音泉さんがどこで収益の帳尻を合わせるビジネスモデルなのか、ちょっと気になります。コスパの売り上げが番組効果ですごく伸びてるとも思えないんですが^^;
地上波AMには、女性ファンを確保しようとする流れも感じられます。第一世代の人気番組もまだまだ元気です。文化放送は、懲りずに色々と新メディアに手を出しているようです。アニラジ界がどこへ向かっていくのかはわかりませんが、今後も面白い番組に出会えるといいな、と思います。
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後は、皆口裕子さんの『電撃パラダイス ゲームミュージックカウントダウン』でしょうか。