ゲーセンに逆風 大手、店舗閉鎖相次ぐ
セガ、ナムコなど大手が相次いでアミューズメント施設の大量閉鎖を始めています。
SNKのネオジオの登場により、家庭でもゲームセンターと同等のクオリティが体験できるようになったためで、アミューズメント業界は“100メガショック”にさらされている形です。……と書いても、悪い冗談にしかならないのが、「wiiが出たから」と言われると、なんだか納得しそうになってしまうのがおそろしいところです。
これに対する反応として、「ファミコンやスーパーファミコンはもっと普及していたよ」というものをよく見ます。この言説は普及台数をベースにした数字としてはもっともなのですが、メーカーの人たちとしては「体を動かす体感ゲームが家庭でもできるようになったから、客はゲームセンターに来ないんだ」という主張ですから、Wiiと対比に使うべきなのは「ファミリートレーナー」とかだと思います(笑)。もっとも、「ユーザーの余暇の時間の奪い合い」という意味では、当然Wii(というよりDS)の登場も影響があると思います。「ニコニコ動画の登場で…」とか、「萌えパチの登場で…」とかと、互換可能な意味で、ではありますが。そんなわけで理由の一因だとは思いますが、「原油高でロードサイドの店舗が打撃を受けたから」の方が、まだ説得力があるレベルの話だとは思います。
さて、ではなぜゲームセンター系の大型アミューズメント施設は打撃を受けているのでしょうか。僕は、「大型アミューズメント施設という業態自体にかなり無理がある」と考えています。僕らは繁華街のゲームセンターに行けばプライズ機やプリクラがあって……というのを当たり前に捉えていますが、それらの嚆矢となったのは1992年の六本木「GIGO」やニコタマ「ナムコワンダーエッグ」のオープンです。当時のGIGOのパンフレットの内容を引用してみましょう。「新しい遊びはいつもギーゴから生まれる。ギーゴを知らず六本木を語るなかれ」「1F<異次元世界への門>」「2F<閉ざされた無限の空間・宇宙>」「3F<古代世界と未知なるもの>」「4F<貴族社会と現代社会>」……内装にはモアイやシュールな太陽が並び、トータルコンセプトは「シュールレアリスム」です。このセンスを見ればわかる通り、大型アミューズメント施設型ゲームセンターそのものが、“ジュリアナ東京”と同じ時代の、頭蓋骨の中にバブルをパンパンに詰め込んだ施設だったわけです。80年代後半の薄暗い不良の溜まり場であったゲームセンターに比べれば、そのイメージは格段によくなりました。その反面、都心の一等地に広大な敷地を複階層で確保し、最新のアミューズメント機器を詰め込む大型ゲームセンターの経営規模は、町のゲームセンターとは桁が違うコストを要するようになったのです。それでもモデルとして成り立ってるのは、アミューズメント施設の経営母体が中身のゲーム筐体を手がけるメーカーでもあることのシナジーの大きさかなと。
セガやバンダイナムコが企業である以上、常に利益の増大を使命としています。そして、各店舗の客数が常に右肩上がり…という状況がなかなかありえない以上、新規出店によって売上高を伸ばそうとすることになります。しかし、人口密集地である都会は限られている上、地価も非常に高く、なかなか収支的に厳しい。そこで大型店舗は、郊外のロードサイドにあるショッピングセンターなど、「地価はほどほど、車でやってくるファミリー客をターゲットにした総合店舗」に入居することが増えてきます。
時を同じくして、ゲーム筐体の大型化が進みました。売り上げを上げる施策のひとつとして、「大型で演出・エンターテイメント性の高いメダル筐体」「コアプレイヤーから大量のインカムをむしりとる大型カード筐体」などが主流になっていったのです。この傾向の影にこそあるのが、Wiiに代表される家庭用ゲーム機の革新による、「別にゲームセンターに行かなくても、同クラスのビデオゲームが家庭でできる」という事実だと思います。ゲームセンターでしか体験できないゲーム体験を追及すると、筐体は自然大型化したのです。それは要求する敷地の増大、ゲーム機器の価格の高騰を招き、新規出店のアミューズメントセンターはますます、郊外型が主流になっていったのです。一方、東京・大阪など都心部のローカルなゲームセンターは、敷地面積的にそれらはおけません。しかしビデオゲームに集客力はない……ということで、「通信対戦麻雀、プリクラ、UFOキャッチャー」の、取りはぐれのない3トップに偏るようになりました。
大型店舗の初期投資が増大することは、当然リスクの増大でもあります。2003年頃までは、景気の良化の影響もあり、なかなか好調だったようです。しかし、それを受けてさらに拡大傾向を続ければどうなるか。アミューズメント施設を利用する人口が有限であり、ここ数年が「既存の大型筐体の新作は出るものの、ゲームジャンルとしては新鮮味はさほどない」という安定期だった以上、いずれパイを食い尽くす事態になります。そこに景気の減速、Wiiの登場、円安、原油高……などの要因が重なれば、店舗数とコストが増大するほど、あっさりと収支状況は悪化します。そのことは運営している側が一番よくわかっているようで、2006年~2007年頃、ゲーム系の編集部にはセガから頻繁に「クラブセガ○○リニューアルのお知らせ」といったFAXが届きました。○○には大抵、「どこだよそれ」という地名が入ります。ナムコからは「飲食に力をいれまっせ」というオーラが漂うFAXが多かった気がします。拡大傾向を続けながらも、“なんとかしなきゃ”という感覚は当然あったはずです。
そこに来て、2007年1月、親会社スクウェア・エニックスの主導により、タイトーのアミューズメントセンターの整理統合に伴う40数店舗の閉店、不採算店舗撤収後、再び拡大を目指す……という決定がなされました。タイトー(スクエニ)がまず動いたことで、他の大手も「おいおい、こりゃうちも大変だぞ」と改めて認識したはずです。株主は当然、「タイトーはああしたけどどうすんの。なんも対策しねーの」とぷんすかしてくる事が予想されるからです。もちろん、セガやナムコクラスの超巨大企業が、すぐさま追随……というわけにはいかなかったと思います。しかし、2007年6月、『ダービーオーナーズクラブ』の仕掛け人であり、アーケード色の強い小口氏から、当時の会長の里見氏にセガの経営トップがバトンタッチした時点で、セガのアミューズメント施設に大鉈がふるわれるのは規定路線だったでしょう。「店舗大量整理」となれば株価に与える影響は甚大。それなら、セガやタイトーに足並みを合わせて、少しでも悪目立ちしないように……とナムコが考えるのは当然のこと。かくして、大手が一斉に決算前の整理統合に走り、アミューズメントの冬の時期がやってきた……というのが、僕の考えです。
大真面目に書いてしまいました。一応E3とかも取材行ってるんだよ、ゲーム系の編集部にいたんだよ、萌え声優オタライターなだけじゃないんだよ! ……というわけで、そっちの仕事も誰かください。お願いします。
セガ、ナムコなど大手が相次いでアミューズメント施設の大量閉鎖を始めています。
SNKのネオジオの登場により、家庭でもゲームセンターと同等のクオリティが体験できるようになったためで、アミューズメント業界は“100メガショック”にさらされている形です。……と書いても、悪い冗談にしかならないのが、「wiiが出たから」と言われると、なんだか納得しそうになってしまうのがおそろしいところです。
これに対する反応として、「ファミコンやスーパーファミコンはもっと普及していたよ」というものをよく見ます。この言説は普及台数をベースにした数字としてはもっともなのですが、メーカーの人たちとしては「体を動かす体感ゲームが家庭でもできるようになったから、客はゲームセンターに来ないんだ」という主張ですから、Wiiと対比に使うべきなのは「ファミリートレーナー」とかだと思います(笑)。もっとも、「ユーザーの余暇の時間の奪い合い」という意味では、当然Wii(というよりDS)の登場も影響があると思います。「ニコニコ動画の登場で…」とか、「萌えパチの登場で…」とかと、互換可能な意味で、ではありますが。そんなわけで理由の一因だとは思いますが、「原油高でロードサイドの店舗が打撃を受けたから」の方が、まだ説得力があるレベルの話だとは思います。
さて、ではなぜゲームセンター系の大型アミューズメント施設は打撃を受けているのでしょうか。僕は、「大型アミューズメント施設という業態自体にかなり無理がある」と考えています。僕らは繁華街のゲームセンターに行けばプライズ機やプリクラがあって……というのを当たり前に捉えていますが、それらの嚆矢となったのは1992年の六本木「GIGO」やニコタマ「ナムコワンダーエッグ」のオープンです。当時のGIGOのパンフレットの内容を引用してみましょう。「新しい遊びはいつもギーゴから生まれる。ギーゴを知らず六本木を語るなかれ」「1F<異次元世界への門>」「2F<閉ざされた無限の空間・宇宙>」「3F<古代世界と未知なるもの>」「4F<貴族社会と現代社会>」……内装にはモアイやシュールな太陽が並び、トータルコンセプトは「シュールレアリスム」です。このセンスを見ればわかる通り、大型アミューズメント施設型ゲームセンターそのものが、“ジュリアナ東京”と同じ時代の、頭蓋骨の中にバブルをパンパンに詰め込んだ施設だったわけです。80年代後半の薄暗い不良の溜まり場であったゲームセンターに比べれば、そのイメージは格段によくなりました。その反面、都心の一等地に広大な敷地を複階層で確保し、最新のアミューズメント機器を詰め込む大型ゲームセンターの経営規模は、町のゲームセンターとは桁が違うコストを要するようになったのです。それでもモデルとして成り立ってるのは、アミューズメント施設の経営母体が中身のゲーム筐体を手がけるメーカーでもあることのシナジーの大きさかなと。
セガやバンダイナムコが企業である以上、常に利益の増大を使命としています。そして、各店舗の客数が常に右肩上がり…という状況がなかなかありえない以上、新規出店によって売上高を伸ばそうとすることになります。しかし、人口密集地である都会は限られている上、地価も非常に高く、なかなか収支的に厳しい。そこで大型店舗は、郊外のロードサイドにあるショッピングセンターなど、「地価はほどほど、車でやってくるファミリー客をターゲットにした総合店舗」に入居することが増えてきます。
時を同じくして、ゲーム筐体の大型化が進みました。売り上げを上げる施策のひとつとして、「大型で演出・エンターテイメント性の高いメダル筐体」「コアプレイヤーから大量のインカムをむしりとる大型カード筐体」などが主流になっていったのです。この傾向の影にこそあるのが、Wiiに代表される家庭用ゲーム機の革新による、「別にゲームセンターに行かなくても、同クラスのビデオゲームが家庭でできる」という事実だと思います。ゲームセンターでしか体験できないゲーム体験を追及すると、筐体は自然大型化したのです。それは要求する敷地の増大、ゲーム機器の価格の高騰を招き、新規出店のアミューズメントセンターはますます、郊外型が主流になっていったのです。一方、東京・大阪など都心部のローカルなゲームセンターは、敷地面積的にそれらはおけません。しかしビデオゲームに集客力はない……ということで、「通信対戦麻雀、プリクラ、UFOキャッチャー」の、取りはぐれのない3トップに偏るようになりました。
大型店舗の初期投資が増大することは、当然リスクの増大でもあります。2003年頃までは、景気の良化の影響もあり、なかなか好調だったようです。しかし、それを受けてさらに拡大傾向を続ければどうなるか。アミューズメント施設を利用する人口が有限であり、ここ数年が「既存の大型筐体の新作は出るものの、ゲームジャンルとしては新鮮味はさほどない」という安定期だった以上、いずれパイを食い尽くす事態になります。そこに景気の減速、Wiiの登場、円安、原油高……などの要因が重なれば、店舗数とコストが増大するほど、あっさりと収支状況は悪化します。そのことは運営している側が一番よくわかっているようで、2006年~2007年頃、ゲーム系の編集部にはセガから頻繁に「クラブセガ○○リニューアルのお知らせ」といったFAXが届きました。○○には大抵、「どこだよそれ」という地名が入ります。ナムコからは「飲食に力をいれまっせ」というオーラが漂うFAXが多かった気がします。拡大傾向を続けながらも、“なんとかしなきゃ”という感覚は当然あったはずです。
そこに来て、2007年1月、親会社スクウェア・エニックスの主導により、タイトーのアミューズメントセンターの整理統合に伴う40数店舗の閉店、不採算店舗撤収後、再び拡大を目指す……という決定がなされました。タイトー(スクエニ)がまず動いたことで、他の大手も「おいおい、こりゃうちも大変だぞ」と改めて認識したはずです。株主は当然、「タイトーはああしたけどどうすんの。なんも対策しねーの」とぷんすかしてくる事が予想されるからです。もちろん、セガやナムコクラスの超巨大企業が、すぐさま追随……というわけにはいかなかったと思います。しかし、2007年6月、『ダービーオーナーズクラブ』の仕掛け人であり、アーケード色の強い小口氏から、当時の会長の里見氏にセガの経営トップがバトンタッチした時点で、セガのアミューズメント施設に大鉈がふるわれるのは規定路線だったでしょう。「店舗大量整理」となれば株価に与える影響は甚大。それなら、セガやタイトーに足並みを合わせて、少しでも悪目立ちしないように……とナムコが考えるのは当然のこと。かくして、大手が一斉に決算前の整理統合に走り、アミューズメントの冬の時期がやってきた……というのが、僕の考えです。
大真面目に書いてしまいました。一応E3とかも取材行ってるんだよ、ゲーム系の編集部にいたんだよ、萌え声優オタライターなだけじゃないんだよ! ……というわけで、そっちの仕事も誰かください。お願いします。
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