茅原実里さんの1stツアー「Minori Chihara 1st Live Tour 2008 ~Contact~」も、今週末の追加2公演を残すのみになりました。雌伏の時期、秋葉原の路上で歌い続けた歌姫の1stツアーラストライブ。ファンにとっては万感胸に迫る想いだと思います(そのへん細かくは→●)。しかしそんな折、こんな告知がありました。
ファンのみなさまへ コンサート観覧におけるマナーご協力のお願い(PDF)
ツアーに参加した友人に、「みのりんは最高、客席は最低」と聞いていたので、マナー面の注意が出るのは悲しいことですが仕方ないでしょうか。ところが、よくよく見て驚いたのはこの表記。
・オールスタンディングのライブハウスでは、フロアに多くのお客様が密集しますので、両手を左右に激しく振る、回転する、腕を振り回す、上半身を反らすなどの過激な応援行為は、周りのお客様へのご迷惑や怪我、トラブルの原因となりますので、禁止とさせて頂きます。
なんとさりげなくオタ芸禁止! 流石に「オタ芸禁止」とは書いていませんが、ロマンス、OAD、マワリ、マトリックスなどが軒並み引っかかる、事実上のオタ芸規制です。オタ芸に関する僕のスタンスは以前の記事を見てもらうとして。今回の件が画期的なのは、声優系ライブで運営側からオタ芸の禁止を明文化したことだと思います
●“ハルヒ-17歳”の世代間ギャップ
これまでも榊原ゆい・妖精ゆいさんのようにオタ芸に否定的な人はいましたが、このような形での禁止告知はあまり記憶にありません。では、なぜ今回のライブツアーでは、このような告知が必要なほど、客席が悪い意味で混沌としてしまったのでしょうか。それは、これがハルヒジェネレーションのアーティストによる最初のライブツアーだからだと、僕は考えています。もちろん、平野さんと茅原さんを世代的に同一に括るのは無理がありますが、『ハルヒ』や『らき☆すた』を入口に入ってきたファン層は、既存の声優系シンガーのトップ所のファンと比べると相当平均年齢が低いはずです。
客席の統制という意味では、やはりベテラン陣のファンは練度が違います。それはアリーナを曇りのない純白に染め上げたAice5、下手にピンク色以外を折ったら自分が折られそうなゆかりんライブを例に引くまでもありません。そうした連携やネットワーク、場の空気は10年かけて積み上げたものなのです。こうした声優のファン層は横のつながりが強く、ひとつの社会が形成されています。この程度まではOK、そこから先は御法度……そうした経験則が働くのと同時に、行き過ぎたヤンチャは排斥される、ある種の自浄作用があると言ってもよいのではないでしょうか。
他方、今回の茅原さんのライブは、ライブ歴の浅い若者と、既存の声優ライブから流れてきた人々が混在しています。この、「混在」というのが難しいところで、トラブルってのは大抵異なる価値観の衝突から生まれます。今回の件でネットのやりとりを色々と追ってみたんですが、オタ芸否定派の中には「PPPH」もNG、という人もいるんですね。一方、他から流れてくるファンの中には、当然「今日も暴れちゃうぜ、俺こんなに変なこと叫んで注目されてる、大人なのに!(ぷぷ)」みたいな人も含まれます。で、そういう人は普段通りかといえば、ファン同士である程度睨みをきかせているようなライブに比べれば、ここぞとばかりに弾けちゃうわけです。初ライブでそうした姿を見た若者は「なんだこの頭のおかしな連中は!」と大戦争の火種になるわけですね。“17歳ジェネレーション”は、ハロプロ移民を受け入れながら、少しずつオタ芸やコールとの付き合い方を覚えてきました。しかし、今新規参入してくる若者たちは、10年かけて煮詰まったオタク文化をいきなり目の前に突きつけられるのですから、パニックになるのも仕方ありません。パニックは言いすぎと取られるかもしれませんが、正直2ちゃんねるなどでの「どんどん通報しよう」「○○と××を追放しよう」みたいな流れには、何やってんの? という戸惑いを覚えます。過去ライブスタッフをやっていた経験としては、2000人規模のオルスタのライブで、誰々をつまみ出せ……なんてことを実行しようとしたら、ライブは中止です。というか、会場内スタッフでそうした判断ができるスタッフはごく一部で、ほとんどはバイト君ですから、対応はほとんど不可能じゃないかと思います。
ただ、本当に極めて悪質なファンに関しては、運営側も馬鹿じゃないのでチェックしてると思います。「暴れられればなんでもいい」タイプの人たちってのは声優のライブならどこにでも、そして最前列にいますから。
●ランティスが宣言した意味
今回のマナーに関するお願いは、主催者側としても苦渋の選択だったはずです。客席の質が悪いですよ、とネガティブな情報を流すに等しいですからね。しかし、いかなる事情であれ、こうした告知がされたことは、大きな意味を持ってきます。それは告知者が「ランティス」であることです。それはイコール、今回のライブを巡る一連の流れが、そのまま今後あるであろう、平野綾さんのライブなどにも適用される可能性があることを意味します。「いわゆるオタ芸禁止」がランティススタンダードになっていけば、ライブの風景は激変します。そうした環境を作るうえで、大切なのは「最初」。既にライブのムードが出来上がっているところへの規制は反発も大きいですが、最初に「みのりんライブのやり方はこう!」とがつんと決めてしまえば、それがベースのカラーとなります。そしてオタ芸禁止でもライブは成り立つという前例は、後に続くルール制定のハードルをぐっと下げるでしょう。
逆に、これだけ大々的に禁止したにもかかわらず、野放し状態になった場合は、言葉は悪いですが完全に舐められ、オタ芸禁止のマナー化、ルール化は厳しいものになると思われます。その意味で、今日・明日のライブは、今後の声優ライブにとって、大きな分岐点といえる物だと思います。
最後に、僕の個人的な意見。この前のライブでは、客席の喧嘩に対して茅原さんが「みんな仲良くしようよ」と何度となく呟いていたとも、心無い野次やくだらない合いの手も多かったとも聞きました。ファンならみんな、彼女が再始動にこぎつけるまでどれだけ我慢したか、どれだけファンや歌を大事にしているか知っていると思います。最後の締めぐらい、曇りのない思い出をプレゼントしてあげませんか? 上の世代の声優さんのファンの人たちって、自分たちが最高のライブを作るんだって強烈な自負があるように見えます。サイリウム企画や一糸乱れぬコールの影には、どかっと自腹を切ってサイリウムやコール本を配って準備してる人たちがいるわけです。それは自己満足にすぎないかもしれませんが、会場全体が演者を盛り上げようとして、演者がそれに応える。そういうシンプルで、とても幸せな空間を、次の世代の人たちにも受け継いでいってほしいなぁ……と、そんな風に思っています。
長くなりました。色々言った分、今日はしっかり見届けてきたいと思います。
ファンのみなさまへ コンサート観覧におけるマナーご協力のお願い(PDF)
ツアーに参加した友人に、「みのりんは最高、客席は最低」と聞いていたので、マナー面の注意が出るのは悲しいことですが仕方ないでしょうか。ところが、よくよく見て驚いたのはこの表記。
・オールスタンディングのライブハウスでは、フロアに多くのお客様が密集しますので、両手を左右に激しく振る、回転する、腕を振り回す、上半身を反らすなどの過激な応援行為は、周りのお客様へのご迷惑や怪我、トラブルの原因となりますので、禁止とさせて頂きます。
なんとさりげなくオタ芸禁止! 流石に「オタ芸禁止」とは書いていませんが、ロマンス、OAD、マワリ、マトリックスなどが軒並み引っかかる、事実上のオタ芸規制です。オタ芸に関する僕のスタンスは以前の記事を見てもらうとして。今回の件が画期的なのは、声優系ライブで運営側からオタ芸の禁止を明文化したことだと思います
●“ハルヒ-17歳”の世代間ギャップ
これまでも榊原ゆい・妖精ゆいさんのようにオタ芸に否定的な人はいましたが、このような形での禁止告知はあまり記憶にありません。では、なぜ今回のライブツアーでは、このような告知が必要なほど、客席が悪い意味で混沌としてしまったのでしょうか。それは、これがハルヒジェネレーションのアーティストによる最初のライブツアーだからだと、僕は考えています。もちろん、平野さんと茅原さんを世代的に同一に括るのは無理がありますが、『ハルヒ』や『らき☆すた』を入口に入ってきたファン層は、既存の声優系シンガーのトップ所のファンと比べると相当平均年齢が低いはずです。
客席の統制という意味では、やはりベテラン陣のファンは練度が違います。それはアリーナを曇りのない純白に染め上げたAice5、下手にピンク色以外を折ったら自分が折られそうなゆかりんライブを例に引くまでもありません。そうした連携やネットワーク、場の空気は10年かけて積み上げたものなのです。こうした声優のファン層は横のつながりが強く、ひとつの社会が形成されています。この程度まではOK、そこから先は御法度……そうした経験則が働くのと同時に、行き過ぎたヤンチャは排斥される、ある種の自浄作用があると言ってもよいのではないでしょうか。
他方、今回の茅原さんのライブは、ライブ歴の浅い若者と、既存の声優ライブから流れてきた人々が混在しています。この、「混在」というのが難しいところで、トラブルってのは大抵異なる価値観の衝突から生まれます。今回の件でネットのやりとりを色々と追ってみたんですが、オタ芸否定派の中には「PPPH」もNG、という人もいるんですね。一方、他から流れてくるファンの中には、当然「今日も暴れちゃうぜ、俺こんなに変なこと叫んで注目されてる、大人なのに!(ぷぷ)」みたいな人も含まれます。で、そういう人は普段通りかといえば、ファン同士である程度睨みをきかせているようなライブに比べれば、ここぞとばかりに弾けちゃうわけです。初ライブでそうした姿を見た若者は「なんだこの頭のおかしな連中は!」と大戦争の火種になるわけですね。“17歳ジェネレーション”は、ハロプロ移民を受け入れながら、少しずつオタ芸やコールとの付き合い方を覚えてきました。しかし、今新規参入してくる若者たちは、10年かけて煮詰まったオタク文化をいきなり目の前に突きつけられるのですから、パニックになるのも仕方ありません。パニックは言いすぎと取られるかもしれませんが、正直2ちゃんねるなどでの「どんどん通報しよう」「○○と××を追放しよう」みたいな流れには、何やってんの? という戸惑いを覚えます。過去ライブスタッフをやっていた経験としては、2000人規模のオルスタのライブで、誰々をつまみ出せ……なんてことを実行しようとしたら、ライブは中止です。というか、会場内スタッフでそうした判断ができるスタッフはごく一部で、ほとんどはバイト君ですから、対応はほとんど不可能じゃないかと思います。
ただ、本当に極めて悪質なファンに関しては、運営側も馬鹿じゃないのでチェックしてると思います。「暴れられればなんでもいい」タイプの人たちってのは声優のライブならどこにでも、そして最前列にいますから。
●ランティスが宣言した意味
今回のマナーに関するお願いは、主催者側としても苦渋の選択だったはずです。客席の質が悪いですよ、とネガティブな情報を流すに等しいですからね。しかし、いかなる事情であれ、こうした告知がされたことは、大きな意味を持ってきます。それは告知者が「ランティス」であることです。それはイコール、今回のライブを巡る一連の流れが、そのまま今後あるであろう、平野綾さんのライブなどにも適用される可能性があることを意味します。「いわゆるオタ芸禁止」がランティススタンダードになっていけば、ライブの風景は激変します。そうした環境を作るうえで、大切なのは「最初」。既にライブのムードが出来上がっているところへの規制は反発も大きいですが、最初に「みのりんライブのやり方はこう!」とがつんと決めてしまえば、それがベースのカラーとなります。そしてオタ芸禁止でもライブは成り立つという前例は、後に続くルール制定のハードルをぐっと下げるでしょう。
逆に、これだけ大々的に禁止したにもかかわらず、野放し状態になった場合は、言葉は悪いですが完全に舐められ、オタ芸禁止のマナー化、ルール化は厳しいものになると思われます。その意味で、今日・明日のライブは、今後の声優ライブにとって、大きな分岐点といえる物だと思います。
最後に、僕の個人的な意見。この前のライブでは、客席の喧嘩に対して茅原さんが「みんな仲良くしようよ」と何度となく呟いていたとも、心無い野次やくだらない合いの手も多かったとも聞きました。ファンならみんな、彼女が再始動にこぎつけるまでどれだけ我慢したか、どれだけファンや歌を大事にしているか知っていると思います。最後の締めぐらい、曇りのない思い出をプレゼントしてあげませんか? 上の世代の声優さんのファンの人たちって、自分たちが最高のライブを作るんだって強烈な自負があるように見えます。サイリウム企画や一糸乱れぬコールの影には、どかっと自腹を切ってサイリウムやコール本を配って準備してる人たちがいるわけです。それは自己満足にすぎないかもしれませんが、会場全体が演者を盛り上げようとして、演者がそれに応える。そういうシンプルで、とても幸せな空間を、次の世代の人たちにも受け継いでいってほしいなぁ……と、そんな風に思っています。
長くなりました。色々言った分、今日はしっかり見届けてきたいと思います。
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コメント
自分はヲタ芸否定派です
ヲタ芸どころか、コールも大嫌いです
何故なら自分はコンサートには生歌を聞きに行くという感覚が強いからです
口パクならともかく、生で歌うなら隅から隅までその音を聞き逃したくないので
コールなんかはかなり邪魔に感じます
しかし、今更ヲタ芸禁止といっても、せっかく育った一つの文化を潰して
しまう事になり、これはこれで残念に思うので、ヲタ芸、コールOKと禁止の
コンサートを交互に開催してくれないかなと思ったりします
どちらも需要はあると思うのですが
ヲタ芸どころか、コールも大嫌いです
何故なら自分はコンサートには生歌を聞きに行くという感覚が強いからです
口パクならともかく、生で歌うなら隅から隅までその音を聞き逃したくないので
コールなんかはかなり邪魔に感じます
しかし、今更ヲタ芸禁止といっても、せっかく育った一つの文化を潰して
しまう事になり、これはこれで残念に思うので、ヲタ芸、コールOKと禁止の
コンサートを交互に開催してくれないかなと思ったりします
どちらも需要はあると思うのですが
posted by NONAME at
2008/03/24
16:52
[ コメントを修正する ]
一言で言えば
「幼稚」に尽きると思います。
私はひと昔前までは声優ファンでした。
今は興味が無くなってアイドルファンに移行しました。
一般にいうローカルアイドル・地下アイドルを主に応援してきましたが、先日きっぱりとやめました。
何故なら来ているファンがあまりに酷いからです。
有料ライブにかかわらず、最前列席とステージの間に入り込んで立って声援しまくる。(当然、最前列席にいてもステージは見えないわけです。)
訳のわからない声援、行動を繰り返す。
うるさいことこの上ないのでアイドルの歌さえ聞き取りにくくなります。
中にはステージに上がりこむ奴もいます。
Jr.アイドルともなると、さらに酷くなり、子ども相手に本気で付き合おうとしたり、親御さんに隠れて連絡先を教える輩もいます。
これらは全て「俺は熱心に応援している。一番一生懸命に応援してるファンなんや。」という思い込みの成せる業だと思います。(事実、イタい奴ほど自惚れ、思い込みが激しい。)
私の周りではオタクがどんどん締め出されていく傾向にあります。
実際、あるアイドルユニットの事務所から「オタクなファンがいるから、あの子達はメジャーになれんのや。これからは一般客を相手にしていく。」と事務所スタッフに宣言されたこともあります。
「幼稚」に尽きると思います。
私はひと昔前までは声優ファンでした。
今は興味が無くなってアイドルファンに移行しました。
一般にいうローカルアイドル・地下アイドルを主に応援してきましたが、先日きっぱりとやめました。
何故なら来ているファンがあまりに酷いからです。
有料ライブにかかわらず、最前列席とステージの間に入り込んで立って声援しまくる。(当然、最前列席にいてもステージは見えないわけです。)
訳のわからない声援、行動を繰り返す。
うるさいことこの上ないのでアイドルの歌さえ聞き取りにくくなります。
中にはステージに上がりこむ奴もいます。
Jr.アイドルともなると、さらに酷くなり、子ども相手に本気で付き合おうとしたり、親御さんに隠れて連絡先を教える輩もいます。
これらは全て「俺は熱心に応援している。一番一生懸命に応援してるファンなんや。」という思い込みの成せる業だと思います。(事実、イタい奴ほど自惚れ、思い込みが激しい。)
私の周りではオタクがどんどん締め出されていく傾向にあります。
実際、あるアイドルユニットの事務所から「オタクなファンがいるから、あの子達はメジャーになれんのや。これからは一般客を相手にしていく。」と事務所スタッフに宣言されたこともあります。
posted by わい at
2009/08/05
21:57
[ コメントを修正する ]
ああ言う事言われたり、されたりして自分はどう思うのか・・・。
綾ちゃんのイベントはおおむねいい感じだったのですが、みのりんの方はライブ自体は良かっただけに悲しかったです。長くライブをされていて少し排他的になるのは困りますが、一定の何かは2人は必要になるのかなと思います。もちろん初めての事なのでこれから良くなっていくと思うし、していきたいと私自身も努力したいです。