喜多村英梨は覇者の系譜を引き継げるのか
 キタエリこと喜多村英梨さんが、スターチャイルドレーベルからアーティストデビューするという話は、結構聞き及んでいる人が多いんじゃないかと思います。実はこの話を聞いて、個人的にかなりテンションが上がりました。

 ラジオ等で予告されていた“重大発表”がスタチャからのデビューだった事について、受け止め方は様々だと思います。キタエリ自体がすでにアニメ界ではよく知られた人気声優ですし、それが出演作品の主題歌を歌うのは、ありふれた話と言ってしまえばそれまでです。それが何故こんなに僕のテンションを上げるのか、口はばったい言い方をすればアンテナにかかるのかと言えば、それは“キタエリ”と“スターチャイルド”という組み合わせだからに他なりません。

●喜多村英梨は過小評価されている

 喜多村英梨さんと聞いてどういうイメージを持ちますか? 僕の中では(本当に)なんでもこなす器用なバイプレイヤー、というのが率直なイメージでした。どんな役柄でもピタっとこなして、必要以上にはキャラの前には出ない。ラジオも、イベントトークも、歌も、演技も、何もかも水準以上にこなす。絵がうますぎる。ちょっとヨゴレキャラで笑いも取れる。2時間枠を投げたら生放送を2時間完璧にこなす。とにかく何でもキタエリに任せておけば間違いない。付け加えるなら、子役出身で若くてかわいい。子役出身と言っても、アニメと声優への思い入れが本当に強くて、子役上がりとは言われたくない意地がある…そのあたりが僕の中のキタエリ像です。

 一度ある取材で自分が「では若い衆に一言キタエリ姉さんから葉っぱをかけてください」的なことを言ったら「私この中で一番年下なんすけど」と返されて超謝った記憶があります。なんでそんなポカを自分がやらかしたのかと考えると、要は彼女のスキルやキャリアが実年齢から考えると飛び抜けていて、名前を知るようになってからは「これだけ人気で、できる人なんだからある程度のキャリアはあるだろう」という思い込みがあったんだと思います。

 先ほど、過小評価と書きました。世の中の多くのアニメファンは、ぼんやりと「キタエリはラジオのおしゃべりも、アニメの演技も、キャラソンも、うまいよね」というイメージを持ってるのではないか、と思います。ただ、どれぐらい演技がうまいのか? トークのアドリブがどれぐらい効くのか? といった要素、声優としてどれぐらい人気なのか…といった要素には、明確なモノサシが存在しないんです。活きのいいジュニア声優で深夜アニメのあちこちで見ます! という人と、ゴールデンタイムの子供向けアニメで長年レギュラーを取っている人のどちらが人気か? それを図る明確な尺度を、我々は持ち合わせていません。

●今の声優業界は、声優の人気を「歌手」としてしか測れない

 ではどこになら物差しがあるのか。もちろん業界内には、データとしてのしっかりした数字があるでしょう。よく言われるのは、ドラマCDによく起用される声優=固定ファンの数字を持っている声優は人気といったものです。ですがそうした数字は、もちろん外側からは見えません。では今、一番明確なモノサシは何か?

 それは、「オリコン」です。自分を含む多くの声優ファンは「田村ゆかり、水樹奈々、堀江由衣」を三大人気声優として認識してると思います。ですがその尺度を支えてるのって、CDの売上枚数であり、武道館や西武ドームといったコンサートのハコなんですね。これは話を『けいおん!』か何かに置き換えても構いません。「CDがこれだけ売れるんだから、かなり人気に違いない」という推定が、大きな尺度になってるんですね。逆に言えば、個人名義CDを出さない声優の人気は、かなりあやふやであいまいとも言えます。

 で。そういう「レコードの数字が人気の尺度」という流れを遡っていくと、必ず行き着くのが声優界の伝説・林原めぐみさんなんです。90年代の林原めぐみの「毎日アニメに主演していてラジオトークも巧みなナンバーワン人気声優」が、CDを出したらオリコン1桁に当たり前のように食い込んでしまう。この、声優としても歌手としてもラジオパーソナリティとしても人気、という林原さんの超人ぶりが、女性声優の人気査定のひとつの原器になっている、というのが僕の考えです。

 そうした、アフター林原の“声優アーティスト”世界の、いわば保守本流ど真ん中……それが、スターチャイルドレーベルなのです。

●実績やイメージの地道な積み上げ

 “今一番人気の声優は?”という問いに、一番多くの人が名前を挙げるのは水樹奈々さんでしょう。紅白歌合戦に出演し、西武ドームを始めとした数多くのビッグライブを成功させ、役者としてもプリキュアやなのはなど実績は十分。AKB48の中にもファンがいて…
…と、積み上げたもろもろの高さが違うんですね。

 そして“大人気声優”という実績の積み上げ、アリバイ作りにおいて、少なくともひとつ前の世代では確実に機能していたのがスターチャイルド、キングレコードという枠組みであり、肩書きです。林原めぐみさんに端を発し、現在は堀江由衣さんが所属するスターチャイルドレーベル、そして水樹奈々さん、田村ゆかりさんを担当するMM制作部は、共にキングレコードに属しています。

 たとえばフライングドッグなら坂本真綾さん、GloryHeavenだったらスフィアや茅原実里さんなど、母集団によっては比肩するであろう人気声優アーティストはたくさんいます。しかし「人気女性声優アーティスト・アイドル声優を3人挙げろ」と言われると、今でもやっぱりキング組が頭にのぼるのです。それは何故かと考えたときに、実は意外に保守的な声優ファン・オタク業界において、スタチャ・キングというトップブランドが持つイメージ効果は意外と大きいんじゃないか、と思うのです。堀江さん・田村さんの2人がやまとなでしこというルーツと歴史を共有し、水樹さんと田村さんは『リリカルなのは』やラジオ番組的なつながりを持つことが“先頭集団”のイメージを形成しやすいこともプラスに働いているかもしれません。横のつながりが、相対的な位置をつかみやすくしてるんですね。

 これはふわっとした、潜在意識も含めたちょっとした「イメージ」の話です。ですから、スタチャから声優アーティストを出せば売れるのかといえば、そんな簡単な話ではありません。今の時代のこの世界、お客さんはシビアですから。ですが話は戻って、キタエリというアーティストは、声優としての実績・知名度・実力と、ボーカリストとしてのスペックを現時点で備えてるんですね。そこにスタチャというブランド、キングレコードというスターを作り上げてきた集団のサポートが加わることで、ひょっとしたら突き抜けた化学反応がこの夏起こるのでは? というのが、今僕の中にあるわくわくの正体なのだと思います。

 まずその最初の試験紙として、「デビューシングルの売上」は非常に大きいでしょう。最近の流れとして、「あ、これは売れるもの(人・コンテンツ)なんだ」とファン、そして流通に認識してもらえるかが、その後に大きく影響する傾向があります。「ジワ売れ」を許容する余裕が業界にないとも言えるかもしれません。

 その初動に大きく影響するであろう、キタエリのテビュー曲「Be Starters!」の出来は、現時点ではまだわかりません。ですが、タイトルやスタッフからある程度類推することはできます。このタイトルのオープニング曲で、電波曲や変化球はたぶん、ありませんよね。作曲の山口朗彦さんは、アニメ主題歌では『インフィニット・ストラトス』のED「SUPER∞STREAM」や、『探偵オペラ ミルキィホームズ』のOP「正解はひとつ!じゃない!!」を手がけています。作詞の大森祥子さんは、『けいおん!』シリーズの数々の楽曲…「Cagayake!GIRLS」や 「Don't say "lazy"」、「GO!GO!MANIAC」他多数を手がけている人です。人選から見ても、あ、結構本気で売りにきてるんじゃないかな? という予感がするのです。

 もちろん、人気は水物。どれぐらい売れるかはフタを開けてみないとわかりません。ですが、若く実力あるアーティストが、老舗のサポートを得て新たな舞台で羽ばたこうとしている。ラジオなどを聞く限り、本人のモチベーションは非常に高い。もしかしたら、5年後には声優界のひとつの分岐として語られるかもしれないこの夏。“キタエリ”の新しい一歩に、ちょっと期待してみてもいいんじゃないでしょうか? 来週の『SAY! YOU! SAY! ME!』はキタエリ密着、らしいですよ。個人的にはキタエリのおもろい部分より、意外と真面目で真摯な一面にスポットが当たると面白いと思うのですが、どうなるでしょうか。
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2011/05/30 00:35 | Comments(0) | TrackBack(0) | 雑記(アニメ系)
10・21アニソン天王山とぽにきゃんとわたし
 今日10月21日はアニソン系のCDリリースがなかなかすごいことになっておりまして、僕が目についただけでも、

Pink Monsoon/シェリル・ノーム starring May'n
「けいおん!」イメージソング 平沢憂
「けいおん!」イメージソング 真鍋和
堕天國宣戦 ALI PROJECT
TVアニメ「にゃんこい!」オープニング主題歌 にゃんだふる!/Cross the Rainbow 榊原ゆい
TVアニメ「にゃんこい!」エンディング主題歌Strawberry~甘くせつない涙~ 今井麻美
けんぷファー OP主題歌 あんりある ぱらだいす / 栗林みな実
Scarlet Bomb! 美郷あき
montage六本木 史(CV.KENN), 新宿凛太郎(CV.置鮎龍太郎), 汐留 行(CV.梶裕貴), 両国逸巳(CV.森田成一)

「Heartsnative」MOSAIC.WAV×鶴田加茂 feat.初音ミク
ドリームクラブボーカルアルバム「PURE SONGS @DREAM C CLUB」

あたりがリリースされます。
個人的には前週の
THE IDOLM@STER DREAM SYMPHONY 01 水谷絵理

がどこまで踏みとどまるかも注目。876組のCDは、「“Hello!!”」では765ほど初動型ではなく、意外と2週目以降伸びたんですよね。これは765のアイマスCDは「買うことがプロデューサーの使命」と考える自動購入型が多いのに対し、876のCDはゲーム購入後の「あ、この曲いいじゃん」買いが結構あったからと考えます。さて、DS01はどう転ぶか。

 脱線しました。というわけで、今週はウィークリー30位以内が狙えるCDがひしめきあっています。今までの展開で考えると「けいおん!」による一方的な掃討戦が展開されるのですが、さすがに憂と和は、軽音部の面々ほどには伸びないでしょう。ですが、今の「旬のコンテンツに一気に人が流れる」市場を考えると、けいおん!がけいおん!であるというだけで爆発してしまう可能性はかなりあります。

 そう考えると、現チャンピオンの「けいおん!」に、ひとつ前の世代の女王「シェリル・ノーム」が挑むという今週の構図はチャート厨的にはものすごく面白いです。どうせならハルヒ新キャラソンが突っ込んできてくれると面白すぎたんですが、消耗戦になっても双方に利がないので正解でしょう。京アニ支持層は、そんなにおこずかいがたくさんない世代が多そうなので、食い合いになると双方伸び悩みそうですし。

 さて、そんな中「なんでこんなごっつい週に」とつい思ってしまうのが、にゃんこいやけんぷファー組。今週に関しては、オリコン順位的には流石に分が悪いので、枚数ベースでの着実な積み増しを狙いたいところですね。


 はてもて。

 「今の時代のCD購入とは、アーティストへの支持を表明する投票行動である」

 が持論である僕としては、今週何を買うかはとっても悩ましいところ。全部買いたいぐらいですが、どうせならこれと決めたのを買ってチャートの動きを見るのが楽しいので絞りたいと思います。

 …基本こういう時、僕は意外と『けいおん!』とか『マクロスF』とかを買ってたんですよね。そういう業界を牽引するようなコンテンツが売れるのは今の時代とても大事だということと、一番広く支持されるコンテンツを好む感性というか、アンテナを張ってないとこの仕事つらいので。

 どこに投票するかな……と考えていると、なんとなくドラクエの行列で『咲-Saki-』の抱き枕を持っていたエコロジさんの笑顔と、忙しすぎて「週末? 休みっておいしいの?」的に素ギレしているメールの文面が思い出されて「よし今週はぽにきゃんのCDを買おう」と思いました。あまり根拠はありません。

 そういえば先日、アイマス関連の取材の帰り道、アイマス記者たちとポニーキャニオンの前を通りかかった際、「ぽにきゃんさんはフジサンケイグループなのに、どうしてTBSとよくつるんでるの?」と空気を読まない小学生のような質問をしたところ、一斉に「んなもん知らねーよ」という顔をされたんですが、某敏腕記者さんに「(危険なところ略)でもぽにきゃんのイベントの司会はニッポン放送の吉田アナでしょ」と言われて、なんかわかんないけど納得した覚えがあります。脱線しました。

 さて、脱線ついでに当日歩いていた面子が誰のCDを買うかとか考えてみると、GameSpotさんは間違いなく「ピュアピュアー」とか言いながらドリクラを買いそうな気がします。ユダめ。太秦まで自腹で行ったアニカンさんは、徳島でMOSAIC.WAVさん用にみくせんおみやげに買ってたのを見たので間違いなくミク。…と考えていくと意外と他に流れるな! というわけで、ぽにきゃんCDの中から、僕とファミ通さんぐらいは今井麻美さんのCDを買うべきだろうという結論に達しました。よく考えたら流通はぽにきゃんだけど、発売元は5pb.Recordsですね。まぁいいじゃないですか。『けいおん!』はほっておいても売れるじゃないですか。

 最初から結論は出てただろうと言われそうですが、せっかく面白い週なので、皆さんもどれが売れるかなぁとか思いながら、お気に入りのCDを買ってみても楽しいのではないかと思います。個人的にはシェリルと大江戸線の売れ行きが全く読めません。

2009/10/21 12:34 | Comments(2) | TrackBack(0) | 雑記(アニメ系)
「マチ×アソビ」レポート予定です。
絶賛放置中ですいません。
色々ちょっとした宣伝せんでーん。

響HiBiKi」さんで昨日7日より、日本一ソフトウェアさんのミュージカルRPG『アンティフォナの聖歌姫』のラジオ「アンティフォナの聖歌姫ラジオ~シモキタの楽譜~」がスタートしました。パーソナリティは下田麻美さんと喜多村英梨さん! 日本一ソフトウェアの広報さんとお酒を飲むたびに「アイマス声優がいかに素晴らしいか」「下田さんや長谷川さんを含めラジオ的に面白い面子がズラリと並んでるアンティフォナでラジオをやらないのは社会の公器たるゲームメーカーとして怠慢である」とか頭のおかしい話をしていたら、本当に下田さんを起用してラジオを作ってくださいました。すてき! しかもパートナーがあのラジオ魔人キタエリということで、しょっぱなからいい意味でひどいラジオになってるのでぜひ聴いてあげてください。

 そしてもうギリギリですが、今日10月9日まで配信されているのが、「眉山秋フェスタ2009 GO GO!FESラジオ!」。徳島で今週末より行われる「眉山秋フェスタ×マチアソビ」の告知ラジオです。パーソナリティは今井麻美さん、喜多村英梨さん、阿久津加菜さん、五十嵐裕美さん。聞き逃した……という方は、眉山で販売されるラジオCDを購入すると、今回の配信分はもちろん、ラジオCD用に収録された番組も聴けちゃうみたいですよ。仕事の縁で収録を見学したのですが、配信分では手探りだった4人の関係が、CD収録分では縮まってきて、個人的にはCD用の番組の方が面白くなってるように感じました! パーソナリティの皆さんも突貫工事でイベントに備える中どんどんチームワークがよくなってるようなので、徳島での公録はもっとよくなるんじゃないかと個人的に期待なのです。

 というわけで、日曜~月曜にかけて、徳島県の「マチ×アソビ」を取材してきます。なるべくいろいろ速報で投げて現場の空気が伝わればなぁと思いますので、「アニメイトtv」さんをチェックしてもらえればと思います。週末なので反映にちょっと時間がかかったらごめんなさい。

 記事にならないようなちょっとしたことは、twitter「kiri_nakazato」で呟いたりするかも。会場周辺の電波状況によっては呟かなかったりするかも。

2009/10/09 22:06 | Comments(0) | TrackBack(0) | 雑記(アニメ系)
魔法の言葉イマジン
 昔はアニラジを聞くのには、ちょっとした準備がいりました。AMラジオ本体、毎週決まった時間にラジオの前に座ること、そして多少の雑音やハングルに耐える覚悟が必要でした。僕は週末はかなりのアニラジっ子(平日はオールナイトニッポンとかブンブンリクエストとか聞いてました)だったので、ラジオ大阪の「電撃系」番組の数々、ラジオ関西(AM神戸)の「ハートフルステーション」や「青春ラジメニア」などはデフォとして、井上喜久子さんや久川綾さんのラジオがあると聞けば山陽や山陰のラジオ、榊原良子さんのラジオドラマがあると聞けば沖縄、日高のり子さんの京都、私たちが翔んだり公平先生のラジオがあると聞けば東海……と、いろいろな地方に懸命にチューニングを合わせたものです。文化放送はKBS京都やハングルとの混線が厳しくて聞けなかったんですが。

 90年代のアニラジの代表的な形は、「1.人気声優が一人で、リスナーのハガキとのコミュニケーションを中心に進めるラジオ」「2.男女2人組の掛け合いトーク(下ネタ率結構あり)+ラジオドラマ」というものが多かったように思います。80年代型アニラジは、「男性アニメ好きアナウンサー+女性の声優/MCさん」が多いですね。ともあれ、僕らはアニラジ専門雑誌などをチェックしながら、あらゆる番組を網羅せんと奮闘していたのでした。

 しかし2009年現在、世で放送されている「アニラジ」を“全部聞いてるぜ”という人は、おそらくいないのではないかと思います。というか、物理的に不可能かもしれません。当時は「地上波AM」が9割、「FM」と「たんぱ(主に雪乃五月さん)」で1割というAM全盛の時代でしたが、今はデジタルラジオによる生番組が登場。そして中心はwebラジオに移っています。新番組の多くでインターネットラジオが放送され、声優さんが個人配信しているものなども含めると、その全貌を把握することすら困難な時代となっています。

 そうすると、番組の形も変わってきます。AMラジオが年単位、時には10年、20年と続いて地域のリスナーと一緒に歩んで行くのに対し、webラジオは早いものでは3か月程度で終了になります。そして番組数が激増した結果、ラジオの形式も変化していきました。「ハガキをベースに声優自身の日常感じたこと経験したことを語るトーク」……といった番組は、数を減じつつあります。それは、そうした濃密なコミュニケーションは、やはりある程度長期の交流が前提にあること。そして、ラジオ巧者の人が週に何本もラジオをかけもちする中、日常を取って出す形式には限界があるからです。

 そこで生まれたwebラジオのスタンダードと言える形式が、「2人の声優を組み合わせ、ゲストを呼び、そこに定番コーナーを投入することで番組を量産。複数の声優の組み合わせの化学変化による面白さを生む」というものです。定番コーナーを中心にするのは、トーク力にばらつきがあっても、最低限のクオリティが保障されるからです。トークメインのガールズトーク系番組は、番組を仕切れる人がいないとグダグダになるリスクをはらんでいますからね。化学変化系の成功例では、最近だと『鉄のラジオバレル』などは代表例と言っていいと思います。柿原さんのイケメンキャラを一定ラインから決して受け入れない能登さん、能登さんにデレデレなあまり変態紳士天元突破する柿原さん、暴走する柿原さんの勢いに引っ張られて、今までにないはっちゃけキャラになる能登さん……という、お互いにこれまでにない一面を楽しめる番組になっています。組み合わせの妙という意味では、日野さんと釘宮さん、小山力也さんを取り巻く女性たち、といった構図もその組み合わせならではのオリジナルと言えるでしょう。『アイマス』や『絶望放送』のように、独自の世界にリスナーを囲い込んで、継続とお約束で関係性を強固にしていく形も特異なパターンでのオリジナルですね。一方、伊藤静さんや生天目仁美さんのような、「誰と組み合わせても面白い、女の子が大好きな人たち」のラジオも人気です。このタイプは、番組名を差し替えても何も問題がないことが多く、webラジオでは非常に重宝されるタイプだと思います。

 そうした、無数に放送されるwebラジオと、旧来のアニラジのフォーマットを踏襲したAMラジオが両輪になっているのが今のアニラジ界だと思います。ソロで番組を引っ張るというのは相当にハードルが高く、個人のトーク力単体でAMラジオとして番組を成立させてるとなると、今の若手~中堅の世代だと田村ゆかりさんぐらいしかいないんじゃないかと思います。「その番組をやってるパーソナリティのファンなら面白い」という意味ならハードルがやや下がって、その分野のトップランナーが堀江由衣さんというところでしょうか。もっとも、文化放送はデジタルラジオの枠数に物を言わせてピンでの1時間、2時間番組をどんどんやらせてますから、そうした環境から新たなラジオスターが生まれてくることに期待してます。

 さてさて。そうしてラジオ界の主流になりつつあるフォーマットに沿った量産型webラジオですが、そうした番組のお約束に「番組ならではの挨拶」「番組の略称」「パーソナリティのニックネーム」などの募集があります。こういうお約束はリスナーも対応しやすいので、「お前全部のアニラジに送ってんじゃねーの」というぐらい、どの番組でも名前を聞く人もいますよね。こういうお約束って、中には「ないない」「かっこ悪い」と斜めに構えて拒否するタイプのパーソナリティさんもいるのですが、個人的にはこうしたお約束は、番組を構成する上で必要な儀式だと思っています。

 先ほどから書いている通り、こうしたフォーマットに沿った番組作りは、量産を前提にしたものです。しかしそうして数十、数百と制作される番組は、往々にしてパーソナリティやコーナーも“どこかで見た”ものになりがちです。その中で、その番組を固有のものとして認識してもらい、思い入れを持ってもらうためには、こうしたお約束を踏襲して、「一緒に番組の土台を作っていく」という儀式が必要なのではないかと思うのです。一緒に番組のガワを作り、お約束を共有した放送を重ねる中で、パーソナリティとリスナーの一体感を作っていくんですね。こってこての挨拶や愛称を馬鹿にする人には、「では、あなたはその分番組の個性や、リスナーを取り込むためのトーク・番組作りをしてる?」と問いかけたくなります。毒舌キャラで売ってるタイプの人は、ある意味当然の拒否だとは思うのですけどもね。

 さて、そんなあまたあるアニラジの中で、個人的に今、一番楽しんでいる番組がアークシステムワークスの『BLAZBLUE』公式WEBラジオ “ぶるらじ”です。杉田智和さん・近藤佳奈子さん・今井麻美さんの3人による番組で、3人+ゲストのトークと、トーク内容に合わせたSDキャラのアニメーションや挿入するイラストなどにとことんこだわった内容で、ラジオだけでなく動画としても楽しめるのが特徴です。

 で、この番組の何がいいって、この接点があまりないパーソナリティ3人を集めたことによるバランスの妙が素晴らしいんですよね。とにかく抜群にいいのが今井麻美さんと杉田智和さんの相性で、いつも通り暴走する杉田さんに対し、同じスピードで突っ走りながらツッコミの手数をバシバシ出していく今井さんというのが基本構図。ですが杉田さんの繰り出すネタを、結構な確率でキャッチできるツッコミ気質の女性声優って、かなり、非常に限られると思うんです。杉田さん自身も「今井さんうちにほしい」と言ってますしね。時としてその今井さんすらも置き去りにするぐらい杉田さんがコアなのも、どちらかというと日頃置き去りにする側の今井さんとしては新鮮です。

 ただ、コアなネタを共通認識として持ってるラジオって、時としてリスナーを置き去りにするんですね。今は亡き『週刊アニたま○曜日』シリーズとか、僕はおっさんたちと年代が一緒の漫画読みでプロレスも好きなのでゲラゲラ笑ってたのですが、果たしてネタが何一つわからないであろう10代のリスナーはどう思ってるのか、とふと心配になったりしたものです。ぶるらじはネタがコアからコアに走りそうになるところで、近藤さんがぽかーんとなるんですよね。で、今井さんも杉田さんも気づかいのできる人なので、そこである程度のブレーキがかかる。で、それとは別にイラストが上手だったり、朗読をしたりする近藤さんのほんわりした存在感が、番組に違ったアクセントを与えてるんですね。暴走する面白ボケ、暴走する面白ツッコミ、に対して3人目が一緒に暴走する必要はないんですよね。後ろをわたわたとついていく近藤さんが、実はバランスのいいペースを作っているのではないかという気がします。

 そんな“ぶるらじ”ですが、実は杉田さんやるな! と思ったのが第1回。今井さんに「イマジン」、近藤さんに「コンドム」というあだ名を一方的につけたところです。ぶるらじって、開始時点で聞いていたリスナーには、結構今井さんのファン、もっと言えばアイマス系のファンも多かったと思うんです。リスナーを増やすうえで『アイマス』のファン層の取り込みってのは非常に大きなメリットなんですけど、こうした「固有世界囲い込み型」のコンテンツのちょっとしたデメリットとして、内に向かって閉じてしまう傾向があるんですね。わかりやすい例で言えば、新谷さんが出演するラジオにはどこにでも絶望放送ネタを投稿する人っているじゃないですか。こういうの、気持ちはわかるんですが、よその番組のリスナーと特定のパーソナリティの間でだけ成立するお約束を他に持ち込むのって、新しい番組の世界の構築の上では結構ご法度だと思うんですね。その意味で、「ミンゴス」の名前の上に乗っかってる情報量の蓄積って、結構膨大なものがあると思うんです。たとえばぶるらじで“72”ネタが飛び交うようになったりすると、僕個人は萎えます。それは、その共通のコードを共有できる仲間たちの場でやるべきネタだと思うので。ただ、ラジオといえばどうしてもアイマスの今井さんを思い出すファンが多い中、杉田さんが「イマジン」「コンドム」というあだ名を押しつけたことによって、少なくとも杉田さんから今井さんと近藤さん、そしてリスナーからの距離が、等距離になったように思えるんです。じゃあ今後今井さんが「イマジン」になるかというとそんなことはないのですが、今井さんと杉田さんの間には「イマジン」「智君」という新しい共通のコードができ、近藤さんに関しても「コンドム」「こんちゃんです!」というお約束のコードが出来たわけで。「イマイアサミンゴス→ミンゴスの説明」という、「これまでのお約束コードの説明」をばっさり流して、無理やりなあだ名付けで上書きしたのって、結構新番組のカラーを決定する上で大きいアクションだったんじゃないかな、と思うんです。今はアイマスファン以外にもおもろいよ、とはっきり言える番組なので。

 番組としてのネックは、杉田さんのスペックが高すぎて、対戦コーナーがなかなか成立してないところかなと思います。杉田さんがシュールなネタに走った時にゲストが勝ちを拾って、頭の柔軟さを競うようなクイズでは杉田さんが強すぎるのが現状なので。近藤さんは「ふつうにがんばってる!」というのが役どころなので、ここはひとつ今井さんの奮起に期待して、天玉ゲットしてほしいところです。キスでもいいけどね。

 本当はもうひとつ、男性パーソナリティの強力な条件特性のひとつに「女性声優と絡んで必要以上に異性を感じさせない、変態、あるいはお兄ちゃんになれる能力」についても書くつもりだったのですが、長くなっちゃうので、本日はこれにて。

 それにしても女性声優3人に囲まれて、「くやしい、でもクリムゾン!」を2回押す杉田さんはちょっと頭がおかしい。大好きです。

2009/06/19 23:59 | Comments(0) | TrackBack(0) | 雑記(アニメ系)
「Prism」ってキャラソンなの?
 最近、オリコンチャートを声優さんのCDやアニソンが席巻することが珍しくなくなってきました。先だって水樹奈々さんが、ついに念願のオリコン1位を達成したことが大きなニュースとなりましたが、今週も「桂ヒナギク with 白皇学院生徒会三人娘 starring 伊藤静 with 矢作紗友里&中尾衣里&浅野真澄」が歌う「本日、満開ワタシ色!」がオリコンウィークリー7位に、アルバムでも「鏡音リン・レン featuring 下田麻美」の「Prism」が26位に新規ランクイン。桜高軽音部の「Don't say“lazy”」や水樹奈々さんの「ULTIMATE DIAMOND」もしっかり上位に残って存在感を発揮しています。

 このような「声優・アニソン系CDのランクイン」の嚆矢となったのは、やはり林原めぐみさんでしょう。1991年頃から本格的な歌手活動を開始した林原さんは、97年のアルバム「iravati」でオリコンの記録では27万枚を販売。女性声優の歌手活動自体がほとんど無かった時代に道を切り開いてのこの数字は、やはり不滅のものといえるでしょう。当時の林原さん関連CDの売り上げには、ほぼ全て僕の1枚が含まれています(笑)。そして林原さんが入り口の扉を開いたあと、「ライブ」での活動を精力的に行い、声優アーティストというポジションを確立したのが國府田マリ子さんであり、椎名へきるさんです。

 その時代に比べて、アニソンの上位ランクインが珍しくなくなった今、アニソン・声優CDがより売れているのか? と言えば、そんなことはありません。消費者が音楽を購入するルートが多様化した結果、「音楽CD」というマーケットが縮小傾向にあります。しかしそのマーケットの中で、アニソンは以前とそれほど変わらず売れているために、相対的にアニソンのチャートにおける番付が上がってるんですね。そうした中、声優・アニソン界隈で一番売れているジャンルは? と言えば、キャラソンです。そして一番売れないジャンルは、と言えば、これもまたキャラソンなのです。

 ここ数年の男性向けキャラソン市場の最大の特徴は、強烈な寡占化です。『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『けいおん!』といった、京アニ作品を中心とした作品のCDを“みんな買い”、それ以外は“みんな買わない”という、特異な右へ倣え型の市場が形成されているのです。この流れに非京アニで割り込んだのは、最近だと『マクロスF』ぐらいでしょうか。「もってけ!セーラーふく」が17万枚売れた、「涼宮ハルヒの詰合」が13万枚売れたと聞くとキャラソンが売れるように錯覚しますが、実際は一般のキャラクターソング市場では、歌い手にかなりの人気声優を起用しても、1000枚~3000枚が上限というのが現状です(※記載を若干変更しました)。歌い手ではなく作品に依存するのがキャラソンの売り上げなんですね。

 だからこそ、“固定ファン”を抱え込んだ作品というのは強く、『アイドルマスター』や『ハヤテのごとく!』のように、コンスタントにキャラソンが売れるタイトルというのは極めて例外的です。主題歌に限れば、『とらドラ!』『みなみけ』などの数字の取れるタイトルもあるのですが。

 と、売り上げ動向に興味がある人には「基礎知識」と言えることを書き連ねてきたのですが、なぜ今こんなことを書いたかと言えば、下田麻美さんの「Prism」のオリコン26位、7000枚という数字をどう受け取っていいのかに戸惑っている人が結構いるように感じたからです。若手声優のデビューアルバムと考えた場合は、7,000枚という数字は破格の大成功です。しかし、初音ミク界隈のCDと考えると、オリコン上位ランクインはもはや珍しくありません。ですが、「ボーカロイド楽曲を中の人がカバー!」という事例は史上初めてですし(※KAITOの風雅なおとさんによる「卑怯戦隊うろたんだー」カバーが先とのご指摘を頂きました。)、そもそもボーカロイドの市場における市場価値という意味では、現時点では緑の子と黄色の子の間には大きな隔たりがあるのが実情です。ですが、しかし。いろんなファクターが右往左往しており、受け取り方が非常に難しい結果になっているなぁというのが率直なところです。

 個人的な捉え方でいえば、「Prism」は“広報チャンネルとしてボーカロイドを使った”下田麻美さん個人名義CDと考えています。今の時代、CDを売るためには、「広さ」と「高さ」の両方のハードルを超える必要があります。まず、こんなCDがあり、こんな魅力があるという、商品の存在そのものを「広く」知らせることが条件になります。TVアニメの主題歌タイアップなどは、そのもっともシンプルな近道です。しかし、楽曲と商品の存在を広く知らせても、そこから先、「その商品に対し1000円~3000円の投資をしたい」と思わせる高さのハードルがあります。その高さを突破するのに必要なのが、「楽曲自体の力」「歌い手の魅力」「歌い手に対するサポーターとしての支援」です。

 このベクトルの違うハードルを越える上で、「幅広く宣伝する」という部分で、ボーカロイドを中の人がカバーするという形式をとることによるメリットは計り知れません。そして、楽曲の魅力と言う点でも、数限りないボーカロイド楽曲の中から、数十万、数百万といったアクセスの支持を受けた楽曲を選別してチョイスできるメリットは非常に大きな物があります。

 ただ、ボーカロイドによる支援が期待できるのは、潜在的な顧客層に対するファーストコンタクトと、楽曲の素材が出揃うまで。そこから先、楽曲にどんな味付けをして、どんな風に歌うか。曲に込めた想いをどんな風に取材などで聞き手に届けるか、それらは下田さん個人の領分だと思います。いわゆる「キャラクターソング」と「Prism」との最大の違いは、明確な形を持った「元キャラクター」というものが存在しないことです。公式にはパッケージイラスト以外を用意しないボーカロイドは、作り手と聞き手の数だけ違った顔を持っています。その中から、“たくさんのリンレンを愛する人々の中にあるイメージ”、そして“下田さんの中にあるリンレンのイメージ”を掬い上げ、形にする作業というのは非常にクリエイティブで、どちらかといえばゼロからキャラクターを作り上げる舞台に近いものだと思います。たぶん、予備知識の無い人にリンレンの設定画と「Prism」を渡して聞いてもらったら、歌手としての評価よりも前に「声優さん(役者)ってすげーな」という感想を持つのではないかと思うのです。ある意味完璧な歌い手であるボーカロイドに対して、人間ならではの演技・芝居というアプローチをぶつけるのは、個人的には非常に正しく、面白いアプローチなのではと、思います。

 「Prism」は個人名義の音楽CDなの? キャラクターソングなの? という区分けに関しては、どっちでもないんじゃね、というのが正直なところです(笑)。むしろドラマCDや朗読といった、役者として演技をするCDに近いのではないかと。その表現形態のひとつが、たまたま“歌”だったという。たびたび引き合いに出しますが、釘宮理恵さんの一連のキャラクターソングに対する取り組みが、まさに「歌を通して演技をする」という感じだと思います。

 そんなわけで、「Prism」は、ボーカロイドという存在を媒介することでたくさんの人に音を届けつつも、実質としての中身には下田麻美の魅力が詰まっていくという、なんだかずるっけな商品になっていると思います。ですが歌手として役者としての魅力的な下田さん、そして鏡音リンレンの楽曲という魅力的な素材があれば、それをうまくサポートしてうまいこと売るのは周りの大人たちの仕事だと思うのですよね(笑)。それでCDがたくさん売れて、僕のような「ミクは結構知ってるけどリンレンやルカの楽曲はそれほど詳しくないのよね」というにわかがリンレンの元楽曲の数々に触れるきっかけができたのですから、こういう関わった“みんなで幸せになろうよ”型のビジネスにはがんがん広がってほしいところなのです。

2009/06/18 23:59 | Comments(6) | TrackBack(0) | 雑記(アニメ系)

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